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ごあいさつ。

初めまして。
この度ブログを開設致しました、Mammie(マミー)と申します。

アメーバの方でも細々活動しているのですが、こちらでもひっそりと活動する事にしました。

ここでは主に、私自身の話を交えつつ、新規ブログ開設に踏み切った今現在のマイブームである、長期連載(放送)作品の『名探偵コナン』について、勝手気ままに考察して行きたいなと考えております。

考察とは言ってもそこまで大袈裟なものではなく、単に自分の好きな部分を挙げて行くだけになるのは目に見えていますが、興味がございましたらお付き合い頂けると嬉しいです。

更新頻度は未定ですが、出来る限り頑張って行く所存です。
これからどうぞよろしくお願い致します。

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アプリで恋する20の条件〜レビュー&感想•前編〜

お久しぶりの投稿です。
何と、このブログも密かに10年目に突入?!

相変わらずのスローペース&ラブコメを愛でるごった煮ブログですが、本年もよろしくお願いいたします。

さて、新蘭がきっかけでラブコメ大好物になった私ですが。
新年早々、またしても良い感じの作品に出会ってしまいました。

それが、タイトル通り
「アプリで恋する20の条件」(通称:アプ恋)
です。

元々、年末辺りにCMで存在を知り、
2021年の「キュン初め♡」
なんて銘打たれていたものの、実のところはそこまで期待していたわけではなく。
(でも、忘れず録画しておいて良かった!)

本当に軽い気持ちで見たのですが…。
うんうん、展開は予想通りベタそのものだけど、まあアリっちゃアリ…?
でも、主人公カップル(本田翼さん&杉野遥亮さん)美男美女だし、何だかんだとってもお似合い♪

くらいだったのです。が!
Huluオリジナル版を見て、どハマりしました。
いやはや、ウマいなぁと思います。

昨今、恋愛もののアプリやゲームも増えてきているためなのか、「カレ目線」が結構重要なポイントや特典として付随しているケースがあるんですよね。

今回のオリジナル版も、このカレ目線(正しくはカレの心の声)が少し聞ける、見られるというところが大きなポイントになっていました。

まだの方は、いきなりオリジナル版を見てしまうより、通常版(地上波放送されたもの)を見てから改めてオリジナル版を楽しむことを強くお勧めしたいです。

むしろ、オリジナル版だけでは消化不良の部分も大きいかもしれません。
有料ですが、見る価値はありますよ(*´ω`*)

というわけで、いつものようにネタバレも辞さない感じで書いていこうと思います(ほとんど自分のための記録用ですが…)。

―♡―♡―♡―
今回の作品、アプ恋は、近年出会い方としてはすっかり市民権を得た印象のある、マッチングアプリで出会った男女3組のあれこれを巡るラブコメディ。
どの出演者も個性的かつ、それぞれが魅力的!
終盤のドタバタ劇とそれに負けない胸キュンな展開は必見です♪

とにもかくにも、今作品。
本田翼さん演じる加瀬妙子(かせ たえこ、以下妙子)&杉野遥亮さん演じる長谷川誠(はせがわ まこと、以下誠)のカップリングが最っ高に可愛くて萌えるんです♡

本田翼さん(以下 翼ちゃん)は、誰もが認めるショートカット美女で、モデルから、ドラマにバラエティにYouTubeにと近年は活動の幅が広がっていて、最近はゲーマーの一面があることでも有名ですよね。

そんな翼ちゃんが非モテで彼氏にもこっぴどく振られた挙句、誰からも選ばれない人生にうんざりする設定なんて甚だ説得力に欠けるところですが、まあ翼ちゃんに限らず美男美女の役者さんをそういう設定にすることは割と多いのでここは突っ込み過ぎずに(笑)

一方、長谷川誠役の杉野遥亮さん。
大変申し訳ないですが、完全にナメてました。
心から懺悔したい。
まさか、あんっなに最強イケメンだったなんて!

幾分前の記事でNEWSの加藤シゲアキさん(以下 シゲさん)にハマった話を書きましたが、実は杉野さんはそのきっかけになった作品、
「ゼロ 一攫千金ゲーム」にも出演されていました。
しかも、チョイ役ではなく、シゲさん演じるゼロを慕う仲間、3人組のうちのひとりというメーンに近い役どころ。セリフもそこそこ多かったはずです。

ところがこの役、なよなよしたおバカキャラ(シゲさん扮するゼロが頭脳明晰な役どころだったため、余計に浮いていました)の上に、髪型や髪色のインパクトが強く、少なくとも杉野さんの持つイケメン具合が発揮されているとは到底言えませんでした。
更に具合の悪いことに、3人組のうちのひとりを演じていたのが、加藤諒さん(笑)←私、加藤諒さんも好きです!
お分かりのように、加藤諒さんの存在感はそれだけで物凄いので、結果、杉野さんの印象は私の中で非常に余計に残りづらくなってしまうことに(もうひとりの岡山天音さんも、存在感はありました)。
しかも杉野さん、身長も高くて185cmもあるんですよね(主演だったシゲさんより10cmも高いです)。

何かの記事でも書かれていましたが、杉野さんは素材は抜群なのにどうにも「影が薄い」「印象に残りづらい」と思われがちだったようで、同じことを思っていたのは私だけではなかった模様。
ですが、ゼロがきっかけで、杉野遥亮という字面は私の中にインプットされることにはなりました。その後も割と名前を見る機会はあったと思います。

が!
今回の作品で彼の評価が180度変わりました。
黒髪がめちゃくちゃ似合う!(PCがブルベの夏or冬なんでしょうか)
そして、前髪を左右に分けずに流し気味にしたことで、私の中でイケメン度が急上昇。

今回は役柄もあいまって存在感も抜群!
影が薄い、存在感がないと言われていたのは、役柄の事情も大きく、髪型や髪色を変えると、別人レベルで雰囲気が変わるポテンシャルを持っていたのだということが分かりました。
単発のドラマですが、今回の長谷川誠は杉野さんにとっては相当の当たり役だったのではないかと思います。

ここから先は、自分の振り返り用にネタバレあらすじダラダラ書くだけですので、ご注意を(汗)
メーンカップルふたりのやり取りと振り返りが中心です。

物語は、仕事も恋も躓き気味、おまけに愛用していたメガネまで壊れてしまった妙子(28歳)が、知人でカフェの店長をしている遥斗(野村周平さん)に勧められ、興味本位でマッチングアプリに登録するところから始まります。

今回結構重要かつ、ぶっ飛んだ役どころとなる遥斗。
野村周平さんは、正統派二枚目役よりも、三枚目役の方が向いているように感じるほど、コメディが向いているのではないかと思いました。

自称アプリの達人、500のいいねを持つ男である遥斗は、妙子や視聴者にアプリの使い方を指南する一方、自身はいわゆる身体の関係目当てでアプリを使うヤリモク(と自身で発言)。

妙子も指南に応じ、登録するアプリや写真の撮り方、プロフィールを書き換えて、徐々にいいねを集める(=モテる)ようになっていきます。

こうしてマッチングした相手とデートを進めていくのですが…。
写真と実際の顔が違っていたり。
いきなり怪しげな宗教に勧誘されたり。

当初は「女性はいいねをもらいやすいから、最初は条件強気でOK」とする遥斗に勧められるがまま設定していましたが、上記の結果や内容も踏まえながら、条件を吟味していきます。

このドラマのタイトル「20の条件」は、作中では詳細が詳しく言及されることなく終わってしまうので疑問だったのですが、妙子が条件をひとつずつ紙に書き出し、壁に貼り付けたり書き直したりするシーンが印象的だったんですよね。

おそらく、その個数が20個だったところから付けられたのではないか、ということに後になって気付きました。

そうして出会った3人目。
条件にも合致していて、申し分なく良い感じだったはずなのに…。
「また連絡しますね」と言われたきり、1週間連絡は来ず、いつの間にやら相手はアプリを退会してしまっていました。

決まった相手が見つかれば、プロフィールを消し退会するのがアプリの作法なのだと遥斗。

落ち込んだタイミングでマッチングしたのが…HASE (ハセ)(=後の誠)でした。
ちなみに妙子はTaekoで登録していたようですね。

満面の笑みで爽やかに写る彼は、文句なしの超が付くイケメン!
しかも、同い年の28歳で、妙子と同じく都内に住む公務員。
最高じゃありませんか!

早速アポを取り付け、喜び浮かれて待ち合わせ場所に向かう妙子でしたが、この日は大雨。急だったのか、傘を持たず、濡れかけてメイクもやや崩れ気味な自身の姿に愕然とするも、「大丈夫、見た目より中身で勝負!」と気合を入れ直す妙子。
すると、いきなり飛んできた水飛沫…

その方向に目をやると、
プロフィール通り、いやそれ以上?!
高身長で超イケメンの「HASE」が、面倒そうに傘を振るっているではありませんか。
(以降妙子は彼を長谷川さんと呼ぶように)

「あの…HASEさん…ですよね?初めまして、私、あの…」
と声をかける妙子。

するとHASEは、妙子に近づいて一目見るなり、
「何か、プロフィールと違いません?」
と手厳しい一言。

面食らいつつも、これがふたりの出会いになりました。
(でも実は、このふたり、冒頭で既に出会っているんですよね…!)

このドラマ、遥斗の相手役として、マッチングしたミステリアスなバツイチアラサー美女の咲子(鷲見玲奈さん)や、妙子の勤める会社の社長、糸川(濱津隆之さん)と、彼とマッチングする実日子(山本舞香さん)も度々登場し、ドラマに彩りを添えています。

テレビ東京が映らない地域に住んでいるため、アナウンサーの鷲見さんを見る機会はあまりなかったのですが、物凄い美人でビックリ(笑)
何と鷲見さんは実際にマッチングアプリを使ったこともあるそうで、役柄というより、素に近いのではないかと思わせるほど、余裕たっぷりなミステリアス美女をナチュラルに演技されていたなと思いました(笑)

糸川は、もしかして?!と思ったら、やはり、「カメラを止めるな!」の監督役の方でした。
開始後数分、妙子を叱りつける姿はちょっと酷いなと思いましたが(苦笑)、実際には社長なのに随分軟弱で砕けたところ、そして浮気をして妻に逃げられた挙句、寂しさに耐えられなかったのか性懲りも無くマッチングアプリを使うなど女関係がだらしなすぎたりと、随分人間味溢れる人で、ユーモラスな感じが思いの外良かったです。

実日子は今時の大学生にして、マッチングアプリを使いこなすものの、その心根はピュアそのもの。
ある人をグーで殴るシーンが出てくるのですが、あまりにも本格的かつ強力。
演じている山本さんは、空手経験者のようですね!

実は遥斗を含めたこの4人、出会いはアプリにも関わらず、それぞれ微妙なつながりがあって(できて)…。
それが分かった途端にわちゃわちゃし出すのが、このドラマの見どころのひとつとなります。(キュンキュンシーンだけでなく、このシーンも笑えて、何度見ても飽きません←)

一方、妙子と誠の初デートがスタート(このドラマではアポと言っていましたが、婚活界隈では、最初の顔合わせとなるデートのことを、デート0と呼ぶこともあります)。既に店を選んでいたらしい、誠に連れてこられたのは…。

煙漂う焼き鳥居酒屋。
最初のアポでこのお店…?と内心疑問を呈す妙子ですが、
いやいや!お金じゃない!大事なのは中身!と思い直し、デートを楽しもうとするものの、相変わらず仏頂面の誠。
爽やかに写るプロフィール写真とはかけ離れた姿がそこにありました。

居酒屋なのにお酒を頼まない誠。妙子だけが飲むことをおわびすると、
「酒は飲めないんじゃなく、飲まないんです」
とピシャリ(これには実際それなりの理由がありましたが…)。

しかも、気を利かせて焼き鳥を取り分けようとする妙子に、
「そんなアピールは必要ない、串から外すと焼き鳥がまずくなる」と一蹴されるわ、手羽先の食べ方でケチをつけられるわ…。

「緊張しているだけだ、きっと不器用な人なんだ」
と言い聞かせ、ニコニコやり過ごしていたものの、
「その歳で手羽先の食べ方も知らないのかよ」
というあんまりな発言&強引なレクチャーに、とうとう妙子もブチ切れ、その本性を露に(笑)

お店の選び方や誠がプロフィールとかけ離れていることを指摘すると、

「随分と嫌味な言い方しますね」(まず自分が…なんですけどねぇ)
「その割によく食べてる」
とにべもなく返す誠。

「だって…美味しいから」←この辺やっぱり妙子は素直。
「良かったですね。俺の店選びのセンスが良くて」

どこまでも上から目線の誠に、早くも帰りたいモードの妙子。

しかも、せっかくのデート中にも関わらず、誠のスマホは振動しっぱなし。
曰く、この間にも次々マッチングしているようで、
「マッチングアプリなんてそんなもんでしょう、いわば公然浮気だ」
と誠。しかも、会うのは妙子で108人目なのだとか。

「正直な人なんですねぇ、長谷川さんて」
→アプリの時点では、ふたりはHASEとTaekoでやり取りをしていたはず。
デートの最初の方、お店に向かう道中くらいで自己紹介をしたのでしょうね。後の展開から、妙子は最初の時点で誠に名刺を渡したのではないかとみました。

劇中、誠は妙子の名前を本人の前で直接呼ぶことはありませんでしたが、あるシーンでフルネームはきちんと把握していたことが確認されます。
おそらく、同じタイミングでお互いフルネームを名乗ったのでしょう。

こうして、好条件の人とマッチングできたと思いきや、妙子の中で誠は「特大級の嫌な奴」となってしまいました(苦笑)

またしても鳴る誠のスマホ。
今度は電話だったようで、「はい、すぐ行きます」の応答。

「急用ができたので、帰ります。君も長居しない方が良い。顔色が悪いですよ」

そのまま本当に誠は帰ってしまいました。
「何なの、あいつ!」
怒りに任せて、焼き鳥をやけ食いする妙子。

まさか、このセリフは実は伏線だらけだったとは、初回見た時には気付かず(汗)
公務員なのに夜間に呼び出し(※)…?というのは、ちょっと引っ掛かるなと思っていたら…この後、まさかの展開が(笑)

※警察官や消防士なら茶飯事でしょうし、官公庁勤めでも、例えば災害対策系の課に所属している場合など、公務員でも夜間の緊急呼び出しは現実世界ならままあり得る話です。ただ、ドラマに出てくる公務員のイメージ(残業がなく定時で帰れる)と夜間呼び出しは、やはり結びつきづらい気がしますし、ちょっと何かあるのかな、もしかしたら誠はただの公務員ではないのかしら?と思わせるシーンではありました(結局その読みは外れていなかったですね←)。

翌日。
妙子は心身ともに絶不調。最悪な男とマッチングしてしまったというショックからか、仕事にも身が入らず…この日は仕事相手として対峙していた遥斗にもその点を指摘され、結果、高熱があることが発覚します。
そのまま病院に行く妙子。

名前を呼ばれ、診察室で待っていると…。

「このクソ忙しい時に…」(仕事モードでも相変わらずの口の悪さ←)とぼやきながら診察室に入ってきたのは、何と…白衣を着た誠ではありませんか!

誠もすぐに妙子に気付き、お互い驚きを隠せない様子。
「あなた…公務員じゃなかったの…?お医者さん?!」
「他に何に見える」

相変わらずの誠ですが、色々とショックが重なった妙子の心身は限界。
「最悪…」という言葉を残して彼女はその場に崩折れてしまいます。慌てて妙子の身体を抱きとめて支える誠(ちょっとしたキュンポイントでした)。

誠の指示で点滴を打たれた妙子。
診断は
「雨で身体が冷えたことによる発熱」
元々疲れが溜まっていたのでしょうか。前日のデートでも「顔色が悪い」と誠に指摘されていました。

初見の段階では流し見(聞き)していたセリフでしたが、よくよく考えると、煙漂う焼き鳥居酒屋、しかも夜、照明も落ち気味な場所で「顔色が悪い」などと即座に指摘できる人はそうそういないと思うんですよね。
このセリフも、実は誠がただの公務員ではないことを示唆する重要な伏線だったのでした。
お酒を飲まないようにしていたのも、夜間の緊急呼び出しに備えるためだったことがわかります。

それに何より、あのデート中、誠は妙子に嫌味を言っていたばかりでなく、予想以上に実は妙子の様子をしっかり観察していた、ということも言えそうです。

「余計な仕事、増やして…体調管理もできないんですか?」
相変わらず妙子に嫌味を言う誠。
看護師さんもいるところで、「長居するなと言ったのに…」などと込み入った会話をしてしまって(振ったのは誠です)、誠が絶賛婚活&デート中であること、そして妙子がただの一患者ではないことがバレバレでしたが、長谷川先生、大丈夫なのでしょうか(笑)
考えてみたら、妙子の熱を確かめるため、誠自らおでこに手を当てるのも、看護師さんに頼んだり、熱を測れば済むことですから、ちょっと越権行為に近いものとみなされてもやむなしな気がします。
だけど、妙子自身悪い気はしなかったようで…。
しかし、
「ほら、とっととベッド空けて!」
の誠の言葉で我に帰り、嫌味を込めた「ありがとうございました!」で、病室を後にする妙子。
ここで、メガネを忘れて行ってしまうんですね。

気付いた誠はすぐに追いかけるのかと思いきや、割れたメガネを見てふと考え込んだ表情に…。

ところで、誠の勤める病院は、クリニックではなく、そこそこ大きめな所のよう。内科医(もしくは小児科医)なんでしょうか。大きな病院だと、外来受付は午前中で締め切ってしまう所がほとんどのため、妙子は受付時間ギリギリで駆け込みの患者だった可能性が。
更に、誠は妙子と同じく28歳の設定ですが、医学部入学以降ストレートで来ているとしても、実は医師としては未だ2年目のペーペーなんですよね(爆)
外来だけでなく入院患者も抱えているとすれば、それなりに忙しいのは間違いないでしょうし、年次の浅さから、妙子のように緊急度が比較的低い患者を回される可能性は大いにあります。
なので、「このクソ忙しい時に…」発言が出たのかもしれません(笑)
劇中では触れられていませんが、入院患者がいる病院であれば、当直なんかもあるでしょうし、例の緊急呼び出しも入院担当患者の急変だったり、救急の場合もあり得ます。
が、展開が早いストーリーですし、とにかく誠が医師であることを見せるのが最優先になっていたためか、病院の外観は一切出てこなかったため、この辺は分からずじまいでした。余計な設定を加えて矛盾が生じては本末転倒ですし、まあ、どこに勤めていようと、医師が忙しいというのは間違いありません故…。

場面は変わり、妙子はすっかり暗くなったオフィスで残業(おそらく、風邪で休んだ分を取り返しているのでしょうか)。
どういう流れだったのか、誠とのことを知った糸川は、
「まさに運命の出会いじゃないかよ、それ!」
と大興奮。妙子に早く連絡をしろ、と促します。
しかし、一連の出来事にすっかり意気消沈した妙子は、
「でも、嫌な奴なんですよ」
と一蹴。それでも糸川は、
「我慢しろよ〜医者でイケメンなんだろ?」
と畳みかけます。
糸川はこの時、誠の顔は知らないはずですが…
確かに医師であのレベルのイケメン(しかも誠は高身長)はそうそういない←
ただ、あれだけの嫌味を言われた妙子にとって、今更誠が医師だと分かったところで、どうこうする気持ちが起きるはずもなく、
「うるさいなぁ!こっちはメガネも失くして、踏んだり蹴ったりなんだよ!」
と、いつものブチ切れ。部下にこんな口の利き方をされても意に介さない糸川は、やはりちょっと軟弱で可愛げがある人ですよね(笑)

妙子に限らず、いくらイケメンで好条件だとしても、口の利き方その他(他にはマナーや清潔感などなど)、ひとつでも大きなマイナスポイントがあると、女性って、割とシビアに「ナシ」判定する傾向がありますよね。
妙子も、この時点でもう自分から誠に連絡を取るつもりも、会うつもりもなかったに違いありません。
ところが…。

何と、そのタイミングで意外にも誠の方から連絡が。
しかも、誠自ら妙子の会社にやって来るという予想外の展開。
妙子の服が変わっていなかったため、誠が来たのは糸川とやり合った直後ですよね。

会社の来客スペースに通された誠。妙子は、誠にコーヒー(おそらく)を出します。
そして誠は、無言で妙子に小さな紙袋を差し出しました。
中に入っていたのは…メガネケース。
「言ってくれれば取りに行ったのに…」
という妙子でしたが、ケースを開けてみると、中には新品のメガネが!

「かけてみて」という誠に促され、メガネをかけてみると、「うん、悪くない」。
「まあ、僕が選んだんだ、似合って当然だ」

誠の予想外の計らいに、これまでのことはどこへやら、すっかり乙女の顔になる妙子(可愛い!)。
「いいんですか?」の返答の代わりに、妙子から出されたコーヒーをしっかり飲む誠。

どうしてプロフィールを公務員に書き換えていたのかという妙子の質問に対し、年収や職業目当てが多くてウンザリしていたためとのこと。
ただ、公務員も婚活市場ではかなり人気の部類に入るはず。それでも、医師よりは抑えられる(それだけ誠への申し込みが凄まじかった)ということなんでしょうね。
「まあ、盛るよりはマシでしょう?」
「すみませんね、盛り盛りのプロフィールで」

そして、「今度の日曜、空けといて」と唐突に切り出す誠。
メガネのプレゼント云々から事態を飲み込めない妙子に「店を予約した」と一言。
更なる予想外の展開に、妙子をしっかり見つめて
「嫌ですか?」と続ける誠。
すっかり陥落した妙子は、「…行き、ます」と返します。
ギリギリまで妙子から目を逸らさずに去っていく誠。
「特大級の嫌なやつ」判定だったはずの誠への評価が見事に覆った瞬間でした。

思いの外長くなってしまったため、続きは後編にて!
いやはや、単発の1時間ドラマ(実質45分)のため、展開がジェットコースターのごとくとても早いんですが、それでもアプリで出会ったこの妙子と誠がどうなるのか、ドキドキ&萌えっぱなしでした。

誠がいちいち予想外のところを突いてきて、不意にキュンとさせてくるんですよね。
最初のデートで「面白くなければ笑わない」と言っていたはずの誠が、どんどん妙子に笑顔を見せるようになっていくところもキュンキュンしました。

私自身は使ったことがないんですが、マッチングアプリや婚活に関しては、割と馴染み深い分野でもあって、その辺りもスッと入ってきました。
ドラマの内容だけではちょっと不十分なところもあるんですが、それでもある程度は実情に即していて、参考にできる部分もあるのかなと思います。

実は、この妙子&誠CPについては他にも書きたいことが色々あって、メモ欄が既に大渋滞しているんです(^◇^;)
なので、感想レビューはとっとと終わらせて次!
頑張っていきたいなと思っています。

こんなですが、今年もどうぞよろしくお付き合いください。

報道組妄想〜幼なじみ彼に恋して case.K FV〜

さて、報道組妄想はMr.Perfectシリーズ連載中でありますが、箸休め的にこれまたどうしても書きたくなったシチュエーションをお送りいたします。

タイトル通り、今回は「幼なじみ彼に恋して」がテーマで、報道組メンバーの彼がもしも私(主人公)の幼なじみだったら??という設定の下、3つのケース(K&T&S)、及びシチュエーションで書いていくものです。それぞれ彼目線のお話も予定しております。

幼なじみどうしの恋愛って、やはり究極のファンタジーであり、憧れでもあるんですよね、私自身(笑)
元々こちらのブログのメーンである、名探偵コナンの新一&蘭のカップルも、幼なじみという設定ですし、私自身、興味が膨らむ一方でした。

しかしながら、やはり現実はなかなかそうでもないことも多いようで、良くも悪くも長い時間で相手を知り尽くした幼なじみというのは、家族や親戚、身内のような存在と化してしまい、恋愛感情が湧きにくい、という側面もあるようです。
万一別れてしまったら気まずいですしね。

ちなみに、NEWSに恋してアプリにも、メンバーが幼なじみという設定のストーリーが存在していて、この時は、メンバー(当時は4人)+α(主人公)全員が面識のある幼なじみで、メンバーの中のひとりと主人公が(周りに冷やかされながら)恋人どうしになる、というものでした。

今回は、その時の設定の踏襲ではなく、メンバーひとりと主人公の1対1での話となります。
未だ全員分の構想は決めきれていないのですが、話によっては、メンバーの友人(主人公とは面識がない)という設定で、別メンバーが登場することになる、かもしれません。

主人公は、やはりおなじみ、本城愛美さん。
※アプリをプレイしていた時、半ば適当に付けた名前でしたが、まさかこんなに愛着が湧き、引っ張ることになるとは思いもしませんでした(笑)

今のところ、
小山さん→主人公より5つ歳上
まっすー→同い年or1つ歳上
シゲさん→同い年
ということにするつもりです。

今回は、一番最初に構想が浮かんだcase.Kをお送りいたします。

―♡―♡―♡―

【愛美、誕生日おめでとう!
愛美ももう22かぁ。すっかり大人の女性だね。
いよいよ就活も本格化すると思うけど、応援してるから頑張れよ!
ところで、今年はどうする?】

誕生日の朝。
彼―慶ちゃん―から、恒例のメッセージが来ていて、思わずにやけてしまうのをどうにも抑えられない。

【慶ちゃん、ありがと!
是非、今年もよろしくお願いします♪
就活も頑張るね!
また相談乗って〜】

いつものように即、返信を済ませた。

彼…と言っても、慶ちゃんは彼氏ではない。
お互いの実家が近所で、私より5歳年上の慶ちゃん、小山慶一郎くんは、いわゆる幼なじみだった。
と言っても、ひとりっ子の私にとって、慶ちゃんは本当のお兄ちゃんみたいな存在で。

親どうしも仲が良く、家族ぐるみの付き合いをしていて、両家で食事をすることなんかもしょっちゅうだったし、私が中学生になってからは、18になってすぐに車の免許を取った慶ちゃんが、車を出してくれることもよくあった。
共働きだった両親に代わって、大学の授業やバイトがなかった時なんか、体調を崩して早退することになった私を学校まで迎えに来てくれたり、病院に付き添ってくれたことまであったりして。
今更だけど、思えば私のため、実の兄以上に色々してくれているかもしれない。

しかもしかも、カッコよくてスタイル良くて、抜群に優しくて。
努力家で学校の成績も良かった慶ちゃんは、この辺りではトップの高校に入り、その後ハイレベルと言われる地元の有名大学にも合格した。

そんな慶ちゃんは、言うまでもなく私の憧れで…。勉強は元々そんなに好きで得意というわけじゃなかったけれど、それでもどうにか慶ちゃんと同じところに行きたくて必死で頑張った。

そしたら、高校はダメだったけれど、何と大学は同じところに入ることができて。
これにはうちの親もビックリしてた。

慶ちゃんは、「愛美なら余裕だと思ってた」なんて言ってくれたんだけど。

そして、大学を卒業した慶ちゃんは、この地元で公務員をしている。
慶ちゃんなら、都会に出てもっと良いところに就職もできたはずなのに、地元から出たくないからって、公務員を選んだんだって。
いつも、いつでも自分以外の人のために一生懸命になれる慶ちゃんに、公務員の仕事は向いているなとは確かに思う。

私もそろそろ就活が大詰めを迎える頃。
なかなか良い感じには進んでいるんじゃないかなと思う。

ところで、誕生日のメッセージに付いていた、
「今年はどうする?」の意味。

実は慶ちゃん、毎年ずっと、私の誕生日を何らかの形で祝ってくれている。
中学生くらいの時までは普通にプレゼントをもらっていただけだったのが、高校生になると、プレゼントに加えて、食事に連れて行ってくれるようになっていた。

そして、その日は毎年、誕生日から1日遅れと決まっている。
これも誕生日当日は、友達や家族、恋人と過ごしたいだろうから、という慶ちゃんの優しさからの提案だった。

恋人…確かにちょっとだけいた時もあった。
だけど、あまり長続きしなくて…誕生日付近に彼氏がいたことは実はこれまで一度もない。

そして、その理由も、大いに自覚がある。
最初は単なる憧れだった。女の子なら誰でも親戚のお兄さんとか、学校の先輩とか、歳が近めな学校の先生とか、そういう人に一時でもときめいたり、ちょっと好きになったりということは、ままあることだと思う。

だけど…。

慶ちゃんに対する憧れは、落ち着くどころか年々膨らんでいって、いつしかはっきりとした恋愛感情に変わっていく。
中学生の終わりくらいには、同級生には目もくれず、既に慶ちゃんのことがどうしようもないくらい大好きになっていた。

だけど、慶ちゃんにとって私は、近所に住む幼なじみで、よくて可愛い妹、くらいにしか思われていないことも十分に分かっている。
私にははっきりと言わないけれど、彼女がいた時期もあったはず。

なんだかんだもう、7年近くも片思いをしていることになる。
いい加減、諦めなければいけないことも分かっていた。
だから、他の人と付き合ってみたりもしたけど…慶ちゃんのことがどうでも良くなるほど、相手のことを心から好きにはなれなかった。

慶ちゃんだって、もう27歳。
いつ、本命の彼女を連れてきて、結婚してしまうか分からない。
今でも家族をとても大切にしている慶ちゃんだし、自分の家庭も持ちたいから、結婚もなるべく早めにしたいな、って前に言っていたのも、聞いたことがある。

だけど、今の私に慶ちゃんからのお誘いを断る理由はない。
それに、慶ちゃんのことは大好きだけど、これまで散々幸せをもらってきた分、慶ちゃんにはその分幸せになって欲しいという思いもある。

慶ちゃんが心から好きな人を見つけたならば、その時は祝福するし、潔く諦められるはず。
結婚式には絶対呼んでもらいたいし、そんな日が来れば良いなとも確かに思っている。

だから、その時が来るまでは、許される限り慶ちゃんとの時間を満喫しようと決めていた。

ピロロッ♪
そんなことを考えていたら、早速慶ちゃんから返事が届いていた。

【おっけー、了解!
お店は任せて。

あっ、でもひとつ謝らないといけなくて…。
今年は俺の勝手な都合で、明日は詰まっててどうしても空けられないんだよね。
当日だけど今日行っちゃうか、無理だと来週以降になるんだけど…愛美の都合はどう?
急で本当ごめんね?】

えっ?
じゃあ今年は、このまま返事をすれば慶ちゃんが誕生日当日に私との時間を作ってくれるってこと?

慶ちゃんの優しさは、ただただ嬉しいしありがたい。
だけど本当は、できることなら当日が良いな、なんて、言えるはずもないし、慶ちゃんの知る由もないことだ。

慶ちゃんの気遣いを無下にはしたくなかったし、わがままを言って困らせるようなことは、絶対にしたくなかったから。
彼女でも何でもない、ただの妹分にそこまでしてくれている、というだけで凄いこと。
私は本当にラッキーだと思う。

【じゃあ、急だけど今日お願いします!
慶ちゃんは本当に大丈夫?】

【りょーかい!俺?俺はよゆーだよ!お店も予定してたとこ多分大丈夫だから、楽しみにしてて!今日何時終わり?迎え行くよ!】

―えっ?これでつき合ってないとか、マジで?
―完全にカレカノのやり取りだよね、これ?

昼休み。
今朝の私と慶ちゃんのやり取りを見た友人達は、一様に驚いていた。

―まあ、確かに距離感は近いけど…昔からこうだし、幼なじみだから。
―でも、単なる幼なじみに、ここまでするかなぁ?
―私も。絶対愛美、脈アリだと思うよ。
―でもさ、誰にでも優しい人だから…私のことはリアル妹的な感じだと思う。

―ねぇ、愛美。この人の写真とかある?
―ああ、うん。
―見たい見たい!

スマホを操作して、慶ちゃんのいちばん最近の写真―先月私の実家で恒例の合同食事会をした時のものだ―を呼び出した。

―わー、初めて見る!愛美のお目当てのカレ写真!
―あー、確かに優しそうだし、イケメンだね?!身長高くてめちゃスタイルも良いし!
―うん…そうなんだ。
―確かにね〜。これだけ優しくてマメな年上のイケメンお兄ちゃん彼が近くにいたら、同年代の男子なんて眼中に入ってこないよね〜

同年代の人もちゃんと見るようにはしているんだけど…やっぱり慶ちゃんが良いなと思ってしまう。
どこかで踏ん切りを付けないといけないのかもしれない。

―でも、今日授業終わったら彼迎えに来るんでしょ?お洒落しなくて良いの?
―あっ、うん…。

一応、着替え持って来てるから…授業終わったら着替えるつもり。
―じゃあ、ヘアメイクは任せて!
―えっ、良いの?

この子はいつもオシャレで、ヘアメイクのサロンでアシスタントのアルバイトもしている。

―うんうん、簡単な道具しかないけど、それでも良ければー!私からの誕生日プレゼントにしとく♪
―ありがとう!

こうして授業後の数十分で、お気に入りのワンピース着替えて友人にメイクを施された私。

―わー、愛美超可愛い!うん、できる範囲で大人っぽいメイクにもしといたから、これなら彼の気持ちも掴めちゃうかも?うまくいくと良いね。

―う、うん。ありがとう。行ってくるね!
―ちゃんとどうだったか報告してよ?

【愛美、お疲れ!今着いたんだけど、もう出てこれる?】

慶ちゃんから、何ともベストなタイミングで、連絡を受け取った。
すぐさま返信をして、慶ちゃんが待つところに急ぐ。

―慶ちゃん!
―愛美お疲れさま〜。じゃ、行こっか。乗って?

ここに来る前にどうにか、学内のコンビニで慶ちゃんの好きなエクレアと飲み物だけは調達しておいた。

―慶ちゃん、わざわざ当日の方にしてくれて、無理させちゃったんじゃない?お仕事もあるのに…ごめんね?
―良いの良いの!今日は仕事の方は融通利く日だったんだけど、明日はちょっと難しそうでさ。今日は愛美がヒロインなんだから、そんなこと思わなくて良いの!それに、今日は特別可愛いね?ヘアメイクも服も似合ってる。
―本当ありがと。えっ、嬉しい!あ、これ。慶ちゃんの好きなやつ、さっき買っといたよ。今日のお礼には全然足りないと思うけど。
―わー、ありがと!愛美の大学、ここのコンビニ入ってるんだもんね。良いなぁ、羨ましい。職場からは遠くてさ〜
―こんなんで良ければまた買っておくし。
―あー、でもディナー前だから、今食べちゃわない方が良いね?もう暑くないし、車に置いておいても大丈夫そうだね。
―うん、後でゆっくり食べよ!あー、でもディナー楽しみ!どこ予約してくれたの?
―着いてからのお楽しみ。

ヘアメイクにも服装にも気づいて、さらりと褒めてくれた慶ちゃん。
よく気がつく人だから…
いつも通り、他愛ない話をしているうちに、車はお店に到着していた。

―えっ、ここ?!

そこは、地元でもかなり有名な高級店のうちのひとつだった。
少なくとも、大学生が気軽に来られるようなところではない。

―慶ちゃん、大丈夫?無理してない?
―もう、俺を誰だと思ってるの〜?ちゃんと仕事して、ちょっとは稼いでますからこれくらいは!

本当、ただの幼なじみのためにここまでしてくれるなんて…慶ちゃんは優しすぎるよ。

美味しいお食事と、慶ちゃんとの楽しいおしゃべりで、時間はあっという間に過ぎていった。

―愛美、就活も良い感じで進んでるんだって?
―うん。第一志望の観光系業界、いくつか最終まで来てるから、ひとつでも内定が出たら決まるかな。
―そっか。観光なら、民間だけじゃなくて、例えば俺の方の業界も、観光課とか町おこし系も今結構力入ってるよ。

慶ちゃんは地元の官公庁に所属、勤務しているけど、正直そっちの方面も憧れを捨てきれずにはいる。慶ちゃんの言うように、観光系の業務もあるみたいだし、何より公務員は景気や時流に左右されず安定しているということも外せない。
実は、既に願書は出しているし、勉強も少しずつ進めている。
試験まで未だ時間があるから、民間の就活をやり切ってから頑張ろうと考えていた。

でも、もし所属先まで慶ちゃんと同じになってしまったら。
いよいよ私は慶ちゃんのことを諦められなくなってしまうのではないか…そんな懸念が頭をもたげたこともあって、慶ちゃんにそのことは直接伝えていなかったのだ。

―とりあえず試験まで時間はあるし、願書だけでも出してみたら?民間の就活やり終わってからでも間に合うからさ!もし、その気あったらいつでも俺を頼って?
―う、うん。ありがとう。

―まあ、今は堅苦しい就活の話はやめにしよっか。そっち系の話、俺が振っちゃってごめんね?愛美なら絶対どっか良いところに決まるから。

―お誕生日、おめでとうございます。

メーンディッシュを食べ終わった流れで、店員さんがロウソクのついたケーキを運んできてくれた。

―わっ、ケーキもあるの?
―もちろん。お誕生日にはケーキでしょ。それと、はい、これ。

―えっ、これ…。

慶ちゃんはいつの間にか用意されていた、小さめの紙袋を私に差し出す。

―誕生日には、プレゼント外しちゃダメでしょ?開けてみて?

私の大好きなブランドのものだ。
袋を開け、包みを開くと、パールがかった淡いパープルのポーチが出てきた。

―わー、これ素敵!早速使わせてもらうね?
―気に入ってくれて良かった!色は完全に俺好みにしちゃったけど。愛美、そのブランドの財布とかトート持ってるイメージだったから、ポーチもどうかなって。
―もー、慶ちゃん最高だよ!幸せ!生きてて良かった…!
―これくらいで大げさ!これからもっと楽しいことあるんだからさ、愛美は。
―本当にありがとう。大事にするね。

慶ちゃんは、確かにいつからか毎年誕生日の翌日に、私を食事に連れて行ってくれた。
最初はフードコートとかファミレスから始まって、それでも全然良かったし嬉しかったのに、いつの間にか少しずつお店のグレードが上がってて…。

そしてプレゼントの方も、いつも高級なスイーツとか入浴剤とかクリームとか、(きっと私を気遣って)消えものがほとんどだったのだけど、今年ほぼ初めて、消えものでないプレゼントまで用意してくれた。ポーチという絶妙なチョイスも、実に慶ちゃんらしい。
しかも、今年は偶然にも誕生日当日に祝ってもらえるなんて…死んでも良いと思えるくらいに幸せ。

慶ちゃんの彼女は、毎年当たり前のようにこうやって祝ってもらえるんだろうな。
プレゼントだってもっと凄いものかもしれない。
憧れるけど、それは私は望んではいけないこと。
これ以上を望んだら、バチが当たってしまう。

でも、このポーチは。
私にとって一生の宝物だ。

―素敵な彼に祝ってもらえて良いですね。良かったら、お写真お撮りしましょうか?

一部始終を見ていたであろう店員さんが声をかけてくれる。
確かに、こうしていたらカップルにしか見えない…よね。
慶ちゃんの方を見ると、

―うん、愛美が良いなら撮ってもらおうよ!

と、ノリノリで応えてくれる慶ちゃん。
やっぱり優しい…優しいから、ますます慶ちゃんを好きになってしまう。

―はい、チーズ!


―♡―♡―♡―

―わー、めっちゃ良い写真!
―愛美、表情が蕩けきってるよ〜
―しかも、ここ凄いランク高いお店だよね?全額奢り?
―うん。
―高級ディナーにケーキにプレゼントに送り迎え…彼完璧だよね?
―ポーチもセンス良いし…多分相当モテるよねこの人、今も。

―で、その後は?何か進展あった?
―…。

翌日。私はいつものメンバーから質問攻めを受けていた。

慶ちゃんとの幸せな時間はあっという間に過ぎてしまって。
その後は寄り道もせず、慶ちゃんはまっすぐ自宅まで送ってくれた。

慶ちゃんへの気持ちは膨らむ一方だったけど、昨夜はあまりにも幸せすぎて、それ以上は何も聞く気にならず、蕩けた気分のまままっすぐ帰ってきてしまった。だから、どうにもなっていない。

―あ、でも…
―なになに?

帰宅後、慶ちゃんにお礼のメッセージを入れたら、

【今日お店で撮ってもらった写真、俺にも送って?俺のスマホでも撮ってもらえば良かったな〜】

という返信が来たのだった。
あまりにも予想外の返信に戸惑ってしまったのと、自分の表情もあいまって、実は未だに返信はできていない。

―愛美さ…やっぱりどう考えてもこのカレ、愛美のこと妹以上の気持ち、あると思う。これで何もなかったら、逆におかしいというか…
―同感。やり取り見たらあからさますぎて、こっちが照れるんだけど!まあ、本来人が見るものじゃないからそれは良いんだけど…
―何とも思ってなかったら、その場の雰囲気で写真はまあ撮ったとしても、その後わざわざ欲しがらないと思うんだよね。
―それに…この写真の彼もめっちゃ良い顔してる。

そうなのだ。
この写真に写る慶ちゃんの顔は、本当に素敵だなと思う。

―さ、愛美!写真付けて返信&送信して!
―そうだよ!善は急げ!彼、写真待ってるって。

友人に促され、私はようやっと写真を送った。

【遅くなってごめんね。これ、昨日の写真。】
【慶ちゃん、めっちゃ良い顔してる!】

だけど。
この時には、写真は実は届いていなかったのだ―。

―♡―♡―♡―
【あとがき】
一編こっきりで終わらせるつもりが、思いの外長くなりそうです。
ずっと慶ちゃんに憧れて想いを寄せる愛美は当たり前なのですが、慶ちゃんの方も、随分分かりやすくて、気持ちがもろに溢れ出てますよね(笑)
だけど、相手は5つ年上だし、子どもの頃からずっと優しかったお兄ちゃんだから、その延長なのだと信じて疑わない愛美。

さてこのふたり、この後どうなるのでしょうか。
当初は愛美の語りで完走した後、サイドKをお送りしようと考えていたのですが、思いの外長くなったため、先にサイドKを挿入して、完結編に持ち込む予定でいます。
もうしばらく、お待ちくださいませ。

He’s my Mr.Perfect②

第2話 かすかな胸の高鳴り

―本城さん!ごめん、××社提出用の決算報告書をまとめたいんだけど、フォーマットってあるのかな?あ、ごめん、フォーマット自体はさっきファイルを見つけたんだけど、イマイチ使い方が分からなくて…。

―あ、はい!××社用の決算報告書でしたら、こちら見てもらえれば。結構書式や体裁の要求が細かいので、ポイントをまとめてみました。

―うわっ、助かる!さすがだなぁ、ありがとう。

あれからしばらく。
小山新課長の体制も徐々に慣れ、1ヶ月ほど経つ頃にはすっかり日常のものとなっていた。
予想通り、小山さん―主任呼びを固辞した私同様、小山さんも、ならばお互い様で、課長呼びはしなくて良いと返してきたのだ―は本当に優しくて頼れる、お兄さんのようなスタンスで業務に当たり、若干お堅い雰囲気のあった経理部全体が和やかに、それでいて仕事は更に上手く回るようになった気がする。

私自身、これまでとほとんど同じことをしていたはずなのに、小山さんと業務内容や体制をイチからしっかりと見直したおかげか、以前よりも格段にこなせる仕事の質が上がったばかりか、所要時間も少なくなった。
それで、空いた時間を使って、これまでなかった決算報告書の作成マニュアルなるものを生み出すまでになったわけだ。

本当にこの人、只者じゃない。
園田前課長の時もそうだったけど、ここ、第1経理課の課長と主任は、バディのようにタッグを組んで共通の仕事をする機会もとても多かった。

ただ、園田さんの時と明らかに変わったことがひとつ…。

―お疲れさま。今日は残業になってしまったね。申し訳ない、今からどうかな?ちょっと遅めの夜ご飯とか。

―あ、はい。喜んで!

着任から1ヶ月半余り、こんな感じで小山さんと仕事終わりに飲み兼食事(私は飲まないことも多いけど)に出かけることも多くなっていた。
園田前課長は相当の恐妻家との噂を裏付けるかのように、年間行事レベルの大規模な飲み会以外、仕事終わりに社員と飲みや食事に行くことはほとんどなかったのだけど、小山さんは違った。
週の半分位は、誰かしら誘っている気がする。

大体はフロア内の社員で連れ立って男女交えての数人規模で行くのだけど、こうして残業があると、そのまま2人で行くことも日常の延長となりつつあった。
これで3回目くらいかな。

―じゃあ、今日もお疲れさま!乾杯!
―お疲れさまです。

ふたりで向かい合って、カチリとグラスを合わせる。
いつもの焼き鳥屋さんにやって来た。
当初は小山さんのお気に入りということで連れて来られたものの、小洒落た雰囲気ながら味も最高。
焼き鳥屋なのに、夜でもヘルシーなおまかせ定食メニューなんかもあって、正直結構助かってもいた。

―今日は遅くなっちゃってごめん。愛美ちゃんのおかげで本当に助かったよ。
―いいえ…私も小山さんに助けてもらってばかりですから…。

いつの間にか仕事終わりの場では、小山さんは私を下の名前で呼ぶようになっていた。
いつからかははっきりと覚えていないものの、まったくもって嫌悪感はない。
最も、仕事中に私以外の女性社員を下の名前で呼んでいるのもよく聞いたから、これが小山さんのスタンスなのだろう。実際、私含めて誰も嫌がる人はいないようだし。

―各社の決算報告書もこれで前より少しは出しやすくなってきたかな。もう少しシステム改善に踏み込んでいっても良いかなと思っているんだけど…。後、マニュアルの作成だね。
―はい、問題ないと思います。私も賛成です。私で手伝えることは何でもお手伝いさせてくださいね!マニュアル作りは、早速取り掛かることにします。部署の中では私がその辺いちばん詳しいと思いますので。

―ありがとう。助かる。システム改善の件については皆の現状の不満も含め、他部署にも掛け合って、交渉を進めていくことにするよ。あんまり無茶言うと、総務部に睨まれるかもしれないけど。
―小山さんなら大丈夫ですよ。私もやれることはやりますから!
―本当愛美ちゃんは抜群に仕事できるよね。園田さんから聞いてたけど、前評判以上だったよ。
―そんな、小山さんが上手く回してくださるからですよ!
―絶対それだけじゃ無理だから…あっ!もう結構良い時間だね。

慌てて時計を見ると、確かにそろそろ帰り支度を始めた方が良さそうだった。
明日も仕事だし…。

―今日は入りも遅かったから…ゆっくりできなくてごめんね?駅まで送って行くから。
―え、そんな…大丈夫ですよ!
―何言ってるの。こんな時間に、女性をひとりで帰して万一何かあったら、悔やんでも悔やみきれないよ。じゃあ、ちょっとだけ待ってて。

そう言うと、小山さんは何食わぬ顔で伝票を拾い、ふたり分の会計をサラリと済ませてしまった。

―あ、あの…。
―良いから良いから。毎回毎回僕が付き合わせてるんだし。お支払いのことなんか気にしなくて良いんだよ。
―いつも本当にすみません…ありがとうございます、ごちそうさまです…。
―全然。それに、愛美ちゃんにはこの場でもいつも貴重な仕事のビジョンやアイディアもらってるしね。コンサル料としては、安すぎて申し訳ないくらいだよ。もっと飲み食いしてもらっても良いのに。
―そ、そんな…。でも…。

何も私ひとりにだけではない。複数人で連れ立って飲んでいる時でさえ、ほとんどの会計は小山さん持ちなのだ。
小山さん自ら、「小山が奢る」を略し、コヤるなどと言っているほど。

店を出ると、約束通り小山さんは私を最寄駅まで送ってくれた。

―今日はありがとう。じゃあ、明日もよろしくね。おやすみなさい。
―こちらこそ、ごちそうさまでした。美味しかったです、おやすみなさい。

翌日。
同じフロアで仲の良い同僚にさっそく捕まってしまった。
―愛美ぃ、昨日も残業した後、小山さんと飲み行ったでしょ?
―う、うん…まぁ…。私は飲んでないけど。
―愛美、最近いっつも小山さんと一緒だし、何だか良い感じだよねー♡どう?何か進展ありそう?
―な、ないよそんなの!あるわけないじゃん!別に、一緒にいるのも単に仕事相手だからだし…それに、園田さんの時とそんなに変わってないよ。
―なぁんだ。何もないのか…。つまんないの。
―ち、ちょっと!
―でもさ、ほら、小山さんあれだけスタイル良くてイケメンだし?一緒に飲んでてときめいたりしないの?
―と、ときめくって…

彼女の言いたいことは何となく分かる。
それなりの歳をした男女ふたりきりで食事。
それが3回目ともなると、何かが起こるかも…?

しかし、現状何も起こってはいないわけで。

確かに同僚が言う通りで、小山さんは、この上なく魅力的な人だ。
容姿だけでなく、仕事もできるし、面倒見も良くてスマートで、性格だって申し分ない。
はっきり言って上司のみならず、男性としても完璧で、理想的な人だとも思う。

一緒にいて全く飽きないし、話も尽きない。
彼のふとした表情その他に、これまで全くドキドキしなかったかといえば、それも嘘になるだろう。
かすかな胸の高鳴りのようなものは、確かに感じたことはある。
でも。

私もこれまでそれなりには男女交際(あまり上手くは行ってないけど)をしてきたから分かるけれど、そこに、男女特有の甘い雰囲気は一切なかった。
小山さんからそういったものが出てくる気配は、1ミリたりとも感じられなかったのだ。
3回目でもこうなら、多分今後もないだろう。

というか、そもそも何も起こるはずがない。
否、起きてはいけないのだ。
だって―。
彼の左手の薬指には―。

―まあ、確かに指輪はしっかりはめてるからね。愛美と飲んでる時も、ずっと付けてる感じ?
―もちろん。

そう。彼はどこからどう見ても、正真正銘の既婚者なのだ。
着任してくる前からそれは話に聞いて知っていた。というか、今や彼の手を見ればそれは一目瞭然で。

―うーん、でもなぁ…。

それでも彼女はまだ何か、納得がいっていないようだ。

―まだ何かあるの?
―あの指輪、モノホンの結婚指輪なのかなぁ?だって、小山さんってこの会社の近くに住んでるはずなのに、休日見かけてもいつもひとりだって言ってた人がいたし…それに、飲みの席でカマかけても、全っ然奥さんの話しないんだよね。
―単身赴任してるんじゃないの?長いことアメリカ支社にいたから、例えば奥さんは実家にいるとか…
―やっぱりそうなのかなぁ。でもあの指輪、もしかしたら単なる虫除けなんじゃないかって話も結構あるんだよね。ほら、ほっといたって小山さんめっちゃくちゃモテるし…
―さすがにそれはないんじゃない?

小山さんの性格からして、女性のアプローチを避ける目的で、そうまでして既婚者を装うとはとても思えなかった。

―だから愛美!今度ふたりで飲み行った時、実際のところはどうなのか、確かめてきてよ!何なら今夜!連チャンでも良いから!
―ええっ!
―ほら、何か仕事のことで相談あるからとか、適当に理由付ければ簡単でしょ?ね?

こうして、私は同僚からとんでもないミッションを課せられることになってしまった。

でもまあ、確かに今はうまい具合に仕事が山積していて、小山さんに相談すべき事項はたくさんあるし、一方で個人的な業務も進めなければならないため、はっきり言って業務内の時間だけでは話足りないのは確かだ。

そこで昼休みを利用して、小山さんのデスクに寄って声をかけることにした。

―小山さん、お疲れさまです。
―ああ、お疲れ。
―昨日はありがとうございました。連続で申し訳ないんですが、今夜も終業後にどこかで打ち合わせできませんでしょうか?マニュアルの件、今日の業務時間内では対応できそうにないんですが、できるだけ温かいうちに話を詰めておきたくて…。
―愛美ちゃんから誘ってくるなんて、珍しいね。でも、ありがとう。マニュアルの件はなるべく早い方が良いもんね。じゃあまた、昨日のお店でも良いかな?
―はい、もちろんです。それでは後ほど。

こうして、アポは簡単に取れた。
でも、確かに…仕事話が中心で、やましいことは一切ない状況とはいえ、こんなに連日会社の部下の女性その他と飲んだりして、大丈夫なんだろうかとは思う。

そんなことを考えていたら、あっという間に終業時間を迎えてしまった。

―愛美ちゃん、今日もお疲れさま。打ち合わせだけど、お店行く前に、会議室で軽く済ませてからにしようか。もう予約は取ってあるんだけどね。

―はい、分かりました。今から準備して、すぐ向かいますね。

私から言い出したのに、いつの間にか予約まで済ませているなんて…。
ダメだと思いながらも、やはり少しはドキドキしてしまう。

結局、30分ほどで簡単な打ち合わせが終わり、その後店に移動した。

―じゃあ、乾杯。今日もありがとね!
―こちらこそです。

お互いのグラスをカチリと合わせ、ジョッキのビールを美味しそうに空けていく小山さんと、とりあえずで頼んだ烏龍茶(とりあえず以前に実は結構好き)に口をつける。
昨日のデジャヴよろしい光景。

―うん、2日連続のビールは、美味しいね!愛美ちゃんも今日は金曜だし、2杯目からは飲んだら?明日は休みなんだし、お財布はここにいるし!
―そんな、2日連続で奢られるわけには…

―だーかーら!コヤりに遠慮は無用なの!すみません!こちらウーロンハイ、お願いできますか?
―えっ!どうして…。

―愛美ちゃん、二人の時も、複数の時もそんなに飲まないのは知ってるけど、前から見てて、あんまりビールを飲んでた感じがないんだよね。で、ソフトドリンクはいつも烏龍茶。もしかしたら好きなのかなって。でも、烏龍茶は大体のお店に置いてあるから、とりあえずの線もあるし、甘いのが好きかもしれない。ただ、今出てきている料理には、甘いのよりウーロンハイが合うかなと思って…って勝手に頼んでごめんね?今更だけど。

―す、凄い…正解です、小山さん。甘いのも好きなんですけど。
―本当?実は俺も甘いの好きでさ!二次会とかでバー行ったりすると、カルーアミルクは外せないんだよね!普通にスイーツも好きだし。

―えー、そうなんですね、スイーツ男子だ!

そういえば、小山さんはよく、社内でもお菓子を配っている気がする。

―ほとんど自分も食べたいっていうかこつけだよね。まあ、昔ほど肩身狭くはないかな?

今日はいつもよりも、仕事以外の会話も弾んでいる気がする。

―昼間の打ち合わせだったら、カフェとかにするんだけどな…おすすめのバーもあるんだけど…。

聞くなら今か。

―小山さん…こうやってお仕事の話もそれ以外も、いつも盛り上がってとっても楽しいし、ありがたいんですが…。毎回奢ってくださったり、今日なんて2日連続、私が当日にお誘いする形になっていたり…嬉しい反面、申し訳ないとも思うんです…その…奥さん、怒っていらっしゃいませんか?

―ああ、うん…。愛美ちゃんこそ、誰か怒る人、いないの?

―私のことは良いんです!

―そうだよね、ごめん…。うん…だよね…。

いつも通りの良い声ではっきりと喋る小山さんにしては随分歯切れの悪い口調と返答だと思ったのも束の間。
はあっ、とひとつため息を吐いた後小山さんから出てきた言葉と表情に、私は思わず釘付けになってしまった。

―怒ってくれたら、良いんだけどな…。

小山さんは無意識だったのかもしれないけど。
私は偶然にも見逃さなかった。
この一言を告げるその間、小山さんが見ていたのは、自分の左手薬指…そして、今まで全く見たことのない甘い甘い表情―。

状況ははっきり分からないが、小山さんには奥さんがいるというのは事実であること。
そして。
その奥さんを心から愛しているということ。

これだけは、疑いない事実だと思った。
あの表情を見たら、これ以上の鎌掛けは野暮だ…というより十二分だろう。

―もー、俺の話は良いの!その辺は、全然気にしなくて大丈夫だから。俺がちゃんとするべきところだしね。でも、愛美ちゃんって、今本当に彼氏いないの?

―いないんです、本当に。

本来なら答える義務などないだろうけど、あの表情を見てしまった手前、正直に答えないと何だか悪いような気がしてしまった。

―ご、ごめんね。セクハラとかの意図はないんだけど、つい…。
―いえ、それは大丈夫です。

―愛美ちゃんレベルの素敵な女性なら、彼氏くらいいて当たり前だと思ったから、つい気になって聞いちゃったんだけど…いないってことは、彼氏とか要らない感じ?

―そんな、買い被りすぎです。全然良い女とかじゃなくて、むしろ恋愛は全然上手くいってなくて、拗らせてるだけで…。理想も高過ぎるから、ダメなんだろうなとか…この間久しぶりに会った同級生にもアンタいい加減ヤバいんじゃないかとか言われるくらいで…

―えー、そうなの?!それは絶対男の方が悪いだけだと思うよ。まあ、愛美ちゃんに釣り合う男は確かになかなかいないから、かもしれないけど。

―そんなことないですから…

今日はお酒が入っているせいもあって、私も随分オープンになってしまっているようだ。
しかし、ここでもまた、会話の方向が意外な展開を見せ始める。

―じゃあ、彼氏お断り!って訳でも、ないんだね?

―それは、ないです。今すぐは難しいですが、近い将来、結婚だってしたいですし…。

―そっか。じゃあさ、愛美ちゃん。今から場所変えて、二次会、やっても良い?

―えっ?

―それで。もうひとり、この場に呼んでも良いかな?

―えっ?

食事はとうに終わっていたし、2杯目のグラスもそろそろ空になるタイミングだった。
いつもなら、そろそろお開きになっても良い頃だったけど…。
今日は、もう少し飲みたい気分だった。
でも、一体誰を連れて来るつもりなんだろう?

小山さんは、私に一言断った後、その場で電話をかけ始めた。

―あー、もしもし、シゲ?今から例のバー来て!っていうか来れるでしょ?近くだし。さすがに仕事終わってるよね?うん、すぐだよ!5分以内でそっち行くから!じゃあ!

―お待たせ、愛美ちゃん。じゃあ、行こっか!すぐ近くのお店だから、大丈夫。

―は、はい。

小山さんは、いつものように伝票を取り上げると、スマートに会計を済ませてくれた。

小山さんにしては、かなりぶっきらぼうな口調かつ、半ば強引な誘い(呼び出しに近い)。
相当気心の知れた仲なのだろうか。

とりあえず、話の流れからしてこの後「シゲ」という男性―小山さんが女性に対してあんな話し方をするとはとても思えない―が合流することだけは間違いないようだ。

―急な思いつきでごめんね?嫌だったらすぐ帰ってもらって大丈夫だから…。後、二次会もお詫び兼ねて全部奢るから、心配しないで?

今日はいつもとちょっと違う小山さんがたくさん見られて新鮮だと思いつつも、やっぱり小山さんは優しくて素敵な人だと思う。
そんな小山さんの気心知れた人―仕事、と言っていたから、社会人には違いないのだろう―というのは、一体どんな人なのか、私は俄然気になった。
ちょっとワクワクしているのかも。

―はい、全然大丈夫です。

二次会の店は、本当に近くだった。
でも、大通りから1本外れたところにあるせいか、見事な隠れ家的バーだった。
おしゃれで雰囲気も良さそう。

―じゃあ、入ろう。あいつ、来てるかな…。

コロリという音とともに、私も中に吸い寄せられていった…。

―To be continued...

He’s my Mr.Perfect①(報道組妄想シリーズ)

こちらまた、恋してアプリ関連から大きく飛び越え、メンバーのお名前を拝借したオリジナルストーリーです。
※これからこの手の話は、グループの名前にちなみ、「報道組妄想シリーズ」というタグで載せようと思います。

今回は、あえて詳しいプロフィールは載せず、物語の中で言及していきます。
こちらでもまた、恋して関連おなじみ、本城愛美(ほんじょう まなみ)さんが主演。
そして、私作品では初めて、メンバーの小山慶一郎さんが出演します。人柄はそのままながら、かなり重要かつ色々なものを背負い、抱え込んでいるような役柄です(笑)

―♡―♡―♡―

第1話 ちいさな変化、おおきな始まり?

―それでさー、昨日も彼氏が会ってくんなくて…どうしたら良いかなぁ?
―それはもう、家見に行った方が良いんじゃない?確実に浮気してるでしょ!
―やっぱそうかなぁ。でも…ねぇ、愛美は?愛美はどう思う?
―…えっ?あ、ごめん…何だっけ??

―も〜。だから、うちの彼氏が何で会ってくれないのかって話!っていうかさぁ、愛美はいい加減彼氏
作らないわけ?
―うーん、まあ、今のところは、予定ないか、な…。

―もううちら若くないんだからさ、あんまり理想高すぎるのもどうかと思うよ。イケメンで仕事バッチリできる人…だっけ?
―まあ、愛美は大手のエリートだから、そんな発想にもなるのかもしれないけど。仕事ばっかで可愛げのひとつもないと、ますますモテないよ!

―まあまあ、愛美には愛美の考えがあるんだから。
―もー、さすが結婚秒読みのカレがいる人は余裕だよねー!

はぁ。
この場で人知れずため息を吐いたのは、もう何度目だろう。
昨年の同窓会がきっかけで、高校時代に仲良くしていた元クラスメート計4人で定期的に集まって、いわゆる「女子会」をやるようになったのだけど。
いつしか、どこの誰かも知らない(しかも短期間でコロコロ変わっている)彼氏の愚痴を延々聞かされた挙句、更には私に彼氏がいないことを詰められる場に成り代わってしまっていた。

ハッキリ言って時間の無駄以外の何者でもないと気付いたは良いけれど、それでも無碍にするのは何となく悪いかなと、グループチャットに反応して、ズルズル参加し続けている自分にもほとほと嫌気が差している。けど…

―もー、相変わらず反応うすーい!愛美のためを思って言ってるのに!顔はそこそこ良いのに、もったいないよ!

まだ言ってる。
「顔はそこそこ良いのに」もったいない?
彼氏がいないのが、そんなに恥ずべきこと?
「私のため」って何様のつもり?

何かがぷつりと音を立てて切れたような気がした。

大体、彼氏彼氏って話題はそれひとつ、しかも、相手はコロコロ変わっているのに、毎回毎回同じような内容の愚痴ばっかり。
最初は「大好き」「幸せ」「今度こそ本当の恋♡」と散々惚気倒しておきながら、一瞬で「会えない」「会ってくれない」「もしかして浮気?」「もう別れるしかないのかなぁ」のオンパレード。
いったい何回この茶番劇を聞かされて来たんだろう。
カレシじゃなくて、誰と付き合ってもすぐに飽きられるそっちの方が問題あるんじゃないの?!

マグマのように煮えたぎったどす黒いものがふつふつと沸き上がってきたけれど、投げつけたところで、お互い火傷をするだけだ。

それに。
私だって先月30歳の大台を突破して、もう若くはないし、四の五の言っていられないのは、確かに彼女の言う通りなのだ。
何よりも、自分の余暇をこんな事にしか使えない自分自身に対して、心底嫌気が差している。
でも、それももう止めよう。決めた。

―ごめん!盛り上がってるところ申し訳ないけど、明日早いから、今日はお先に失礼するね。

まだ何か言われている気がしたけれど、テーブルに代金を置いて、構わず店を飛び出した。

なんだ。今まで何を躊躇して、わざわざ最後まで付き合ってたんだろう。
終電もやり過ごして、わざわざタクシー代まで使って。
せっかく毎日頑張って働いて、その上で努力して捻出している時間もお金も、これじゃドブに捨てるのと変わらない。
途中で切り上げる事なんて案外簡単だったんだ。
今日は終電までまだまだ時間がある。外の空気を吸いながら、ゆっくり歩いて帰ろう。
と思っていたら。

―愛美ー、愛美!!

―さゆり?

さっきの女子会メンバーのひとり、さゆりが追いかけてきた。
さゆりは、当時からいちばんの親友で、女子会でも彼氏の愚痴や私に彼氏を作れなど、理不尽な強要はしない。まさに、先程話題に出た、長く付き合っている、結婚秒読みの彼氏がいる。さらに、企画のとりまとめや毎回オシャレなお店の予約をしているのもさゆりだ。
女子会参加を止め(られ)なかったのは、今思うと彼女の存在が大きかったんだと思う。

―愛美、お金随分多かったから、これ戻すね。
―ごめん。別に良かったのに。わざわざ追いかけてまで…
―ううん、愛美の離脱で、お開きにする良い口実ができたから。ありがとね。
―そっか、それなら良かった。それとごめんね、さゆり。私当分集まるのよそうかなって…

―うん。私も、しばらく企画はしないことに決めた。ここ最近、愛美に申し訳ないっては思ってて…。あの子達、色々思い通りにいかないのを、愛美にマウント取って解消しようとしてるのが見え見え。さすがに、今日のはないなって思った。最初は楽しかったんだけどね。
―うん。でも、さゆりの言ってることが本当だったとして、私にマウント取ったところで、どうしようもないのにね。
―あの子達からしたら、愛美はそういう眩しい存在なんだよ。良い大学出て、大手でバリバリ仕事してて。私は、そんな愛美の存在が誇らしいだけでしかないけどね。
―そんなことないのに。それに、理想高くて、彼氏が長いこといないのは本当だし。
―それなんだけどさ、愛美。私、ずっと引っかかってるんだよね。
―えっ?何か引っかかるようなこと、ある?
―私が知る限り、愛美はスペックだけで相手を見るようには思えないし、そんなに理想が高いとも思ってなくて。「仕事ができるイケメン」って、単なる愛美の理想じゃなくて、誰かそういう特定の人がいるんじゃないの?

―えっ?
―もしそうなら、頑張ってみなよ、ってこと。愛美、私に言わせればそこそこじゃなくて、私の友達の中ではトップクラスの美人だよ?じゃ、気が向いたら、またふたりで会おう!その連絡はして良いかな?

―うん、もちろん!じゃあね!

さゆりはバスに乗るため、反対の方を曲がって行った。

彼女は昔から鋭いところがある。
理想が高い自覚はあるけれど、それ以上に…。
「仕事ができるイケメン」が、私の近くに確かに実在している。
しかも、とびきりのイケメンが。

でも、今までほとんど話をしたことがなく、接点もあまりない。
歳は3つ上。
社の若きエース的存在。
黒髪が最高に似合っている。
スーツもキマっているし、スタイルも良い。
時々見せるメガネ姿もとんでもなくハマっている。

誰かに聞いたところによれば、
私の第一志望だった某有名大学に現役で入って、大学院まで卒業しているだとか。
イギリスへの留学経験もあるだとか…。

…そんな彼は、一応私の同期で。
だからもう、知り合って7年近くは経っていることになる。

でも、入社当初の社員研修と、年に何度か開かれる同期会で見かけた時に、一言二言話しただけ。
彼は私のことを認識しているのかどうかさえ疑問符がつくレベルだ。

あまり口数が多いタイプではないのか、誰かと盛り上がっていた様子はなかった気がする。
それに、この数年は、同期会でもほとんど見かけない。海外赴任が長いみたいで…でもつい最近、本社に戻ってきたようで、また社内でちょくちょく見かけるようにはなっていた。

これを「恋」としてしまうのはかなり違和感があるし、もちろん、この間私もいくつかは恋愛もしていたけど、あまりうまくはいかず。
社内恋愛はしたくなかったから、社外で出会った人や知人の紹介で付き合ったりもしてみたけど、私の仕事の忙しさに引かれることも多かった。

「愛美は可愛げないよね」
「俺より忙しい女は無理」
「愛美といると、自分のダメさが際立つ気がする」

こんなこと、何度となく言われてきた。
ああ、またダメか…となるたび、

―(私より絶対忙しい例の彼なら、少なくともこんなことは言われないんだろうな…)

と、思いを馳せてしまう。その繰り返しだった。
彼の人となりさえそれほどよくは知らないのに。
言わば、芸能人やアイドルを崇拝するような感覚なんだろうなとは思うけど。

でも。
今思えば、自分の意思で女子会を切り上げたあの時から、全てが動き、変わり始めていたのかもしれない―。

翌日。
今日は、部署の配置換えの日。
今回は結構大掛かりで、年1回の定期人事異動並みに大幅な人員入れ替えもあると聞いている。

国内大手のとあるメーカーに勤める私は現在経理部の第一経理課で、主に国内での事業に関する経理を取りまとめるのが業務だ。
仕事に関しては真面目に取り組んできたのが奏功したのか、配属3年目にして主任の役職が付いた。

いわゆる花形と言われる営業や事業(特に海外)への配属はないけれど、これはこれで、出世コースのひとつであるらしい。
あまりそんな欲はないんだけど、元々営業、事業志望というわけでもなかった私には、率直に経理や総務の裏方業務は向いていると思っている。

そして今日から配置換えにより、第一経理課長―私の直属の上司になる人―が交代するということだけは確定している。

前任の園田課長はとても良い人で、仕事もしやすかっただけに、残念で仕方がない。

―本城さんなら、大丈夫!これからも頑張ってね!

先週の飲み会後、直々にそんな言葉をかけてもらった。
内々で引き継ぎ作業もされていたらしく、今日から本格的に着任するということだ。

その時。
―皆さん、おはようございます!

―…えっっ?

目が覚めるような、明るく通りの良い声に、オフィスがどよめくのが分かった。
声だけではない。
一際目を引く長身に、スタイルの良さ。それでいて小顔で、整った優しげな顔立ち。

彼は、社内でもかなりの評判かつ有名な人。
徐にオフィスの正面に立った彼は、こう続けた。

―今日から、こちら経理部第一経理課の課長を務めることになりました、小山慶一郎です。海外支社勤務時に現地で経理担当をした経験はありますが、本格的な経理業務は今回が初めてになります。ご迷惑をおかけすることも多々あるとは思いますが、少しでも皆さんが楽に働けるよう尽力しますので、これからどうぞよろしくお願いします。

オフィスからは、自然と大きな拍手が沸き起こった。

―すごっ!まさか小山さんがうちの課に来るなんてね。

同僚がハイテンションで話しかけてくるのもまあ無理はない。
私もこれは想像していなかった。

小山慶一郎さんは、この社ではかなりの有名人で、ルックスやスタイルの良さのみならず、相当優秀な社員としてよく知られている。

確か年齢は35、6だったかな。
入社直後からずっとアメリカ支社勤務だったが、2年ほど前にいきなり帰国してきたかと思えば、本社の人事部に配属され、メンタルヘルスケア部門で、社内のハラスメントその他の相談窓口を担当していたはず。
よく、メンタルケアに関するアンケート配布回収や個別面談のアポ調整などで、その存在を見聞きすることも多かった。

小山さんがメンタル部門を担当してから、体制も大きく変わり、相談がしやすくなったという話はそこかしこで聞いたし、ハラスメント案件もいくつも解決していると、専らの評判だったのだ。
小山さんが帰国、着任してからというもの、中途退職者さえも明らかに減ったという話まで出ていた。

時に重い案件を手掛けているにもかかわらず、社内で小山さんを悪く言う声はどこからも聞こえてこないし、これまでひとつも聞いたことがない。

そんなヤリ手でイケメンの小山さんが、まさかこの経理部に来るなんて…誰も予想だにしなかったというわけ。

でも、そんな小山さんが課長なら、きっとうまくやれるはず。私(たち)はそう確信した。

早速、始業時間が近づいてくる。
主任の私は、小山さんと向かい合う形で、実質いちばん席が近い。

自分の席に着き、改めて全体向けの挨拶を終えた小山さんは、わざわざ私のところまで来てくれた。

―本城主任!初めまして、新課長の小山です。園田前課長からお話は色々と伺ってます。何か困ったら、まず本城主任を頼れば、間違いないと。特に最初は言葉通りになってしまうと思いますけど、よろしくお願いします。

―すみません。本来私がそちらへ行かなければならないですのに…。本城です。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。あ、主任は付けなくて大丈夫です…誰もそんな風に呼ぶ人いませんので。

ビジネスシーンとはいえ、随分可愛げのない受け答えになってしまった…と気づいたところでもう遅い。
こういうところが、いけないんだろうな…と思っていたら。

―ははっ、そうなんだ、了解。じゃあ、これからどうぞよろしくね、本城さん!

小山さんは何ら気にする風もなく、むしろ先ほどよりも砕けた感じで返してくれた。
些細なことかもしれないけれど、私にとってはとても嬉しく、ありがたいことだった。

―(小山さん、やっぱり良い人だ―)

―はい、こちらこそよろしくお願いします!

意識して笑顔も作る。
さっきよりは、感じよくできたかな。

―To be Continued...

【あとがき】
めちゃくちゃお久しぶりの上、別ジャンルの内容でごめんなさい!
実は、書き溜め途中の話が、ジャンル問わず本当にたくさんあるんですよね…(汗)
しばらく書かないうちに、コロナ禍に突入してしまったり、何とNEWS(報道組)の方も、集大成となるはずだったライブは中止、その間にメンバー編成までもが変わってしまったりと、なかなか直視しづらい出来事も…。
コロナ禍での突然の発表は、やはり辛いものがありました。
でもまあ、誰も歩みを止めていないことを私達も受け止めつつ、細々でもやっていけたらなと思っています。
彼らの形が変わろうが、過去の素晴らしい産物が無価値になるというわけではない、ですからね!

そして、お話の方ですが。
これも、どうしても書いてみたかった話です。

割と、この話の愛美は、自分自身の経験もほんのり投影されている部分もあるかもしれません。

例えば、小山さんが着任してきた場面は印象的で、私が以前会社勤めをしていた時、人柄も良く、仕事も抜群にデキる上司が早々に異動となり、悲しんでいたところ、後任の上司も前任に負けず劣らずとても良い人で、本当に良かったー!といった他ならぬ私の経験が元になっていたりするんです(笑)
これからも、そんなエピソードが散りばめられるかもしれません。

前述の通り、今作初めて小山さんが登場しています(実は、まっすーこと増田さんの話も、公開こそされてはいないものの、書きかけが存在しているんです)。
まっすーは今のところは登場予定ないんですが、どうしようかなといったところで。

早々に小山さんが登場したということは、愛美の理想のお相手が誰なのか―もうバレバレですよね(爆)

さて、そのもうひとりのお方はいつ、どのような形で登場するでしょうか。
次回を是非、お楽しみにお待ちください。

テーマ : NEWS
ジャンル : アイドル・芸能

アプリ補完小説①―NEWSに恋してより―

久しぶりの投稿ですが、今回はかなり毛色が違います。
前回、「NEWSのとあるメンバーさんを好きになってしまった!」
という話をしましたが、その後日談のようなものです。
かなりコアな内容になりますので、パスワードを設定しております。

※約1週間限定で解錠していますが、その後は施錠します※

何と、今年彼らと恋ができちゃうアプリがリリースされたんですよね。
最初はそこまでは手を出すものか!と思っていたのですが、アプリの評価が物凄く高い事が妙に気になって、結局手を出してしまいました(笑)
恋愛アプリはこれまでもあまり続いた試しがなく、どうかな?と思っていたのですが、結果、なかなかにハマっています。とっても楽しいです。
恋愛アプリとしても普通に楽しいのですが、NEWSの事を少しでも知っていて、メンバーの情報が入った状態でやると、楽しさが倍増すると思います。
「このメンバー、これが好き(趣味)なんだよね!」
とか、
「確かに、このメンバーならこんなこと言いそう(orしそう)〜(笑)」
みたいなことが多く、なかなか粋な演出が多いなと(爆)
制作陣の情熱や、NEWSメンバーに対するリスペクトもひしひしと感じております。

そういうわけで、完全なる架空のキャラクターとの恋愛とは違い、アイドルとしては確かに実在する人物との疑似恋愛ができる、ということで、単なる2次元ではなく、2.5次元くらい、はたまた、3次元に限りなく近い感覚で楽しめちゃうというのはかなり大きいのかなと。

本編のストーリーもじっくり楽しめるボリュームですが、月数回行われるイベントも毎回楽しみで…。
まだまだ新参なのですが、2回目に参加したイベント
「新しい恋のはじめかた」のシゲさんパートが特に印象的でした。
あまりにもステキなストーリーだったので、その後日談(甘々なエピローグもあるんですけどね!)を書きたくなってしまったのです。

そのストーリーの大筋なのですが、物語の冒頭でいきなり、主人公ちゃんが、想いを寄せていた人や付き合っていた彼氏にフラれてしまうところから始まります(どのメンバーパートでも結構手酷くフラれます)。
しかも、そのフラれた場面を、作中様々な設定と役に扮したメンバーにバッチリ目撃されてしまい…。
でもそれをきっかけに、各メンバー達と交流を深め、最終的に失恋を乗り越えて彼らと結ばれる、というシナリオです。

シゲさんのみならず、各メンバーの役とフラれるシチュエーションを以下にまとめてみました。

【小山さん】
→同じマンションの住人
※顔見知りかそれ以下で、ストーリー開始前は、互いの名前もろくに知らなかった模様
→付き合っていた彼氏が別れを告げ、出て行く場面を目撃
※後述のシゲさんパートとは違い、相手の詳細や、どういう付き合い方をしていて、何が原因で別れることになったのかが作中あまり詳しく言及されておらず、別れ方自体もかなりあっさりでした

【増田さん(まっすー)】
→高校時代の同級生
※現役時代は、主人公ちゃんとそれほど密な関わりはなかった模様
→同窓会で二次会への移動途中、意中の同級生彼を呼び止めて告白するも、あっさりフラれてしまったところに、偶然出くわしてしまった
※この時まっすーは、二次会の人数を確認すべく、返答がまだだった主人公ちゃんを探していた

【手越さん】
→スポーツバーで働く店員(バーテンダー)
→主人公ちゃんが前から好きだった男友達とバーでスポーツ観戦を楽しんだ後、帰り道で告白するも、恋愛対象ではないと告げられ玉砕。主人公ちゃんに忘れ物を届けようとした手越さんが、彼女を追いかけたことで告白の場面に居合わせることになってしまった

【加藤さん(シゲさん)】
→主人公ちゃんが勤める会社の取引先に当たるエリートホテルマンで、度々一緒に企画を進めていた
※若干ワーカホリック気味?
→数年前の同窓会で再会した彼と付き合うも、多忙を理由に主人公ちゃんをフッてしまう。初めて訪れた店で一方的な別れ話をするという非情さ。その店にシゲさんが来ており、別れ話の一部始終を聞いてしまうことに…

ざっとこんな感じなのですが、おそらく主人公ちゃんにとって、最も失恋ダメージが大きかったのが、他ならぬシゲさんパートだと思われます。
先に書いていますが、シゲさん同様、お付き合いをしていた彼と別れた設定の小山さんパートでは、彼とどこでどのように出会い、どの程度付き合っていたのか、何故別れたのか、といった情報が一切出て来ません。しかも、後の展開からしても、元彼を思い出したり苦しむ描写もさほどなかった(小山さんの接し方の巧さや男気という名の魅力にもよるのでしょうが)…と言いますか、割とすぐ薄れてしまっていたように記憶しています。

また、手越さんパートでは、主人公ちゃんは元々意中の彼、男友達は見込み薄ということを分かっていながら告白して、その後はスッキリしていますし、まっすーパートも同様で、フラれた痛手はそこそこ負っている一方、彼を引きずるような描写まではありません。

完全なる例外が、シゲさんです。
同窓生だった元彼とは年単位で付き合うも、多忙を理由にフラれる上、作中でも、主人公ちゃんと別れてイキイキしている(ように映ったのでしょう)様子の元彼と再会するシーンまであります。
しかも、元彼同様、シゲさんも仕事に真摯なワーカホリックタイプであり、物語が進むにつれてシゲさんに惹かれながらも、仕事が忙しい人との恋愛は難しいことを十分に知っている主人公ちゃん。そうでありながら、またしても仕事に一生懸命な男性を好きになってしまったことに苦悩し、元彼と同じ事の繰り返しになるのではと恐れるようになります。

そして、シゲさんもまた、図らずも彼女の元彼を知っているので、それを気遣ったり、はたまたヤキモキしたりする場面(これはファンとしては単純に萌えますが←)もあったりするわけです。

作中シゲさんは、
「仕事に集中したい(故に恋人を手放してしまう)元彼の気持ちは同じ男としては理解できる」
と言いながらも、彼を尊重して、泣きも怒りもせず別れに応じた主人公ちゃんに感銘を受けた様子。

「あなたみたいな人を手放すなんて、元彼さんはバカだ」
とまで言います。

「あの場面を見てしまったのは申し訳なかったけど、もし見ていなかったらきっと恋には落ちなかった」

というシゲさん。
主人公ちゃんが元彼の前や人前では泣けないことを知った彼は、
「今夜、ひとりになったら泣かないですよね?」
と彼女を気遣うところにもキュンとさせられます。

そして…

「好きだから、放っておけないです」
「俺を見てください…俺だけを見てください…俺のこと、好きですか?」(中略)
↑思わず頷いてしまう主人公ちゃん

「目の前にいる俺のことだけを信じて、好きでいてください―」
こうして、シゲさんの情熱的な告白により、ふたりはお付き合いを開始するわけですが…。

ここで私、ふと思ったわけです。
私自身、曲がりなりにも恋愛のことや、男性心理について多少勉強した経験があるので分かるのですが…。
この元彼、別れを切り出したタイミングは確かに仕事に追われていたのでしょうし、それに加えて倦怠期や何か(あるいは手近くなところで新しく好きな人ができたか)で主人公ちゃんが煩わしく感じたのは間違いないのでしょう。
しかし、時間が経ち、少し仕事が落ち着いたタイミングでその損失に気付き…はたまた、意中の子にアプローチするも失敗とか…!?
で、もしかするとまた、主人公ちゃんに都合良く復縁を申し込んでくるのではないか?!
と。

そんなシチュでちょっと考えついた、ふたりのその後―エピローグよりさらに先―のストーリーです。

【主な登場人物】
本城 愛美(ほんじょう まなみ)
→主人公。都内のトラベル会社に勤務しており、主に旅行プランの企画&立案を担当。取引先で度々一緒に仕事をする加藤に次第に惹かれていき…

加藤 シゲアキ
→愛美の愛する今彼で、彼女からはシゲくんと呼ばれている。都内のリゾートホテルに勤務する、エリートホテルマン。ホテルの利用プランを立案する仕事で愛美と知り合い、今でも時々一緒に仕事をしている。問題児である後輩•山崎の指導に四苦八苦する場面も。

ユウタ
→愛美の元彼。高校の同級生で、同窓会での再会をきっかけに付き合い始めるも、多忙を理由に愛美を振ってしまい…。


―♡―♡―♡―
元彼ユウタと別れてから―もとい、シゲくんと付き合い始めてから―約半年が経とうとしていた。
季節はすっかり冬へ向かおうとしている。

シゲくんとの仲は相変わらず順調だ。

仕事が忙しいことは間違いないけれど、オンとオフの切り替えがしっかりしているシゲくんに、ないがしろにされていると感じたことは、ありがたいことに、これまで一度もない。

今日は待ちに待った金曜日。
明日からは念願の休日だ。
それだけじゃない。
今夜は、久しぶりにシゲくんに会える日でもあるのだ。

シゲくんは、海外のホテル査察のため、3週間ほど前からヨーロッパ各国へ出張していた。
今日の午前中に帰国して、しばらく休みに入るのだそうだ。

「仕事が終わったら俺の家に来なよ。夕飯用意しとくからさ。連絡くれたら、最寄駅まで迎えに行く」

帰国したばかりで疲れているだろうに、こんなにありがたい提案までしてくれる。
シゲくんが、とても料理上手だったということは、付き合ってから初めて知ったことだ。
仕事が抜群にできる上に、料理まで上手いなんて…女性としては負けちゃってる感も否めないけど、シゲくんはそんなこと気にする必要ないから、好きでやってるだけだし、と笑う。

出張中でも、シゲくんはマメに連絡を入れてくれていて、度々チャットが来ていた。
ただ、時差の都合もあって、リアルタイムでのやり取りはあまりできず、電話はしたくても全然できなかった。
シゲくんは、3週間も直接会えないんだし、電話もしようよ、多少だったら時間も合わせるからって言ってくれていたんだけど…
さすがに、連日慣れない土地で仕事をしているであろうシゲくんに迷惑はかけられなかった。

おかげでシゲくんのハスキーボイスがとっても恋しくなってしまっている。

それに―。
今の私は、シゲくんにも一切話していない「とある案件」
を抱えている。

といっても、私の気のせいや思い込みの可能性も高いから、なおさら言えない。
実は、ここ数日、「誰かにつけられている」気がするのだ。
もちろん、心当たりなどない。

ただ、自宅までは知られていないと思う。
仕事帰り、会社を出てから最寄駅まで歩く間、あらぬ気配を感じる―ような気がするのだ。

そんな事もあって、本当はシゲくんに癒してもらいたい気持ちも大いにあるのだけれど、ここはぐっと我慢した。

そして迎えた今日。
仕事を一刻も早く片付けて、シゲくんに会いに行く!と意気込み、いつもより早めに出社し、仕事に取り掛かることにした。

―愛美、今日は特別気合入ってるよね!あ、もしかして例の彼氏さん、今日帰って来るんだっけ?

昼休み、ランチを共にした同僚にそんなことを言われる。

―うん、実はそうなんだ。

―良いなぁ…〇〇ホテルは老舗リゾートだし、彼、そこの幹部候補なんでしょ?しかも噂によると物凄いイケメンらしいじゃん!元彼のこと引きずらないでさっさと切り替えて、大正解だったよ、愛美。

―う、うん…確かに元彼のことはもうとっくにどうでも良くなってたかも…今の今まで忘れてたくらい。

半年前。
元彼ユウタにフラれた直後の私は本当に酷かった。
事もあろうに、フラれた場面の一部始終をシゲくんに目撃されてしまっていたことまで判明する。

その直後は一緒に仕事をするのに多少気まずく感じる場面もあったけど、シゲくんがフォローしてくれたり、気遣ってくれたりもしたし、何よりその「気まずさ」のおかけで、フラれた痛手自体は最小限で済んでしまったこともまた事実だ。

こうして、この日は絶好調をキープしたまま、いつもより随分と早く仕事を終える事が出来た。

―この時間に出られるのは、久しぶりかも…!

まだ定時からそれほど時間が過ぎていない。
オフィスを出て、足早に最寄駅へと向かう。

―…んっ?

まただ。
やっぱり変な気配、足音のようなものを感じる。
怖くなった私は、更に歩くスピードを速めることにした。
とにかく早く駅まで行かなきゃ。

でも、この日は勝手が違った。

―あ…っ!

急ぎすぎたのか、何もないところでつんのめってしまう。

そして、

―…!

左肩に思わぬ感触が。
声を出すのも忘れて、恐怖で固まっていると―

―愛美!

―…?

後ろから声がして、弾けるように振り返ると、そこにいたのは…

―ユ、ユウタ?

まさかの元彼だった。

―良かった、やっと追いついた。愛美、いつも歩くの速いから…

―ちょ、ちょっと!いつも!?やっと追いついたって、それじゃあここ数日…。

これ以上は言葉にならない。

―うん。愛美に何とか会えないかなって、会社で待ってて…。

―止めてよ!私がどれだけ怖い思いしたと思ってるの!要件は知らないけど、他にやり方あるでしょう?

―ご、ごめん…悪かった。

―それで、どうしてこんなこと…

―愛美に会いたくて。それに愛美とどうしても話がしたかった。別れてから、どうもしっくり来なくてさ。仕事も思ってたようにうまく行かないし。愛美を手放した罰が当たったんだろうな。別れてから、随分後悔したよ。あの時は本当にごめん。

―………。

―自分勝手で申し訳ないのは分かってる。けど…失って初めて、愛美のありがたみに気付いた。俺に、もう一度だけチャンスくれないか?今度は絶対愛美を悲しませたりしないって約束するからさ…もう仕事がどうとか言い訳もしない。頼む!別れてからずっと愛美のことだけ考えてたんだ。

予想外の展開だった。
それを伝えたいがためにあわやストーカーまがいの行動にまで出たユウタの熱量に驚きこそすれ、それで私の心はもう、ぴくりとも動かないのがはっきり分かった。

―ごめん。言葉自体はありがたいけど…やり直すつもりはない…かな。

―…どうしてもダメか?

―前に会った時に言ってくれてたら、考えたかもしれないけど…今はもうそのつもりはないよ。

―…新しい男でもできたのか?

正直に答えれば「YES」だけど、シゲくんの存在は知られたくないし、正直に答えるいわれはない。
それに、申し訳ないけれど、今目の前に元彼を見ても、惜しいことをした、という気持ちは全く湧いて来ないのだ。
この人のことだから、YESと言えば相手はどんな男なのか詳しく聞こうとしてくるだろう。
昼間、同僚にも言われた通り、残念ながら、シゲくんの方がこの人より何もかもが上だ。
それをそのまま言ったって、ただ彼のプライドが傷つくだけだろう。
私は、注意深く口を開いた。

―ごめん。それを答える必要はない、と思ってる。ただ、どちらにしてもあなたとやり直す気持ちはないってことだけ。

―……。

―じゃあ、私急いでるから行くね。それから、二度とこんなことはしないで。本当に怖かったから。じゃあね。

それだけ言い残し、私は足早にその場を離れ、駅へと歩を進めた。

随分時間を取られたような気がしていたけれど、乗ろうと思っていた電車には間に合って、ホッとする。
座席に腰を下ろし、シゲくんに早速その旨チャットで伝えてひと息つくと、足が震えて来たのが分かる。

この半年間で、色々なことが随分変わったのだと実感する。

ユウタと別れたこと。
仕事がちょっと忙しくなったこと。
そして、何よりシゲくんと付き合い始めたこと―。

ストーカー(というのは語弊があるかもしれないけれど)の正体はユウタだったということは軽い驚きだったけど、恐怖以外の何者でもなかった。
半年前―特に別れた直後―だったら、こんな感情にはならなかったと思う。
同じ事を言われていたとしたら、もしかすると喜んで応じていたかもしれない。

しかし、今や彼は、私にとってはもう、
「その辺にいるどうでも良い男性」
に変わってしまっていたのだ。
だから、一連の行動は恐怖さえも感じた。

それより何より。
今の私は―
一刻も早く、シゲくんに会いたい。

その思いしかない。

早く、早くシゲくんに会わせて―
いつも通りの走りをする電車に、心の中で鞭打ちながら、駅への到着を待った。

そして、とうとう電車がスピードを緩め、目的の駅に到着する。
シゲくんの家に行くこと自体が久しぶりのため、この駅に降り立つのもしばらくぶりだ。
時間帯のせいか、たまたまなのか、そこそこ乗り降りがある駅なのにも関わらず、今日はあまり人の往来がないようだ。

改札に向けて歩を進めていると―。
見つけてしまった。

今、一番会いたかった顔を。
彼は悔しいくらい変わっていなかった。
あれ、でもほんの少し痩せたかな?

付き合って半年近くになるのに、未だにその格好良さ(外見だけではないのだけど)には気後れしてしまうこともある。

あっ。
こちらに気づいたであろうシゲくんが、一瞬くしゃっと笑って、小さく手を振ってきた。
私はこの表情にすこぶる弱い。

そのまま吸い寄せられるように改札を出て、一直線にシゲくんの元へダッシュした。

―愛美、久しぶり。そんで、お疲れって…えっ??

僅かに戸惑うシゲくんにも構わず、私は無意識のうちに、シゲくんに抱きついてしまっていた。
シゲくんの姿を見た途端、すっかり心が緩んでしまったのかもしれない。

―あ、ごめん。一応人いるのに。

―全然?しばらく会えなかったし?まあ、これくらいなら。…ただいま。

そう言って、シゲくんは軽く腕を回して私を抱きとめつつ、背中を優しくトントンと叩いてくれた。

―…おかえりなさい。

解放されるまでほんの一瞬のことだったのに、もうドキドキが止まらなくなってしまう。
さっき味わった恐怖感とは180度違っていた。

―じゃあ、早いとこ行こっか。約束通り、夕飯作っといたし。愛美もお腹空いたでしょ。

―わあっ、ありがとう!楽しみ!でも、帰ってきたばかりで疲れてるだろうに、夕飯の用意まで、ごめんね?

―全然。飛行機の中でちゃんと寝といたし、夕方まではのんびりしてたから、大丈夫だよ。こっち。

そのままシゲくんに腕を引かれて付いて行くと…

―あれっ、車?

駅からシゲくんの家までは、歩きでも十分の距離だ。

―ん。ちょっと買い忘れがあって。先にスーパー寄ってたから、ついでに迎えも車で良いかって。たまには悪くないでしょ?

―うん!シゲくんの車も久しぶりだし!あーっ、ドライブも楽しいよねー。

―じゃあ、今度はドライブデートにしよっか?

―うん!

忙しいのに。疲れているはずなのに。これだから。
至れり尽くせりで嬉しい提案までサラッとしてくれるシゲくんをますます好きになってしまう。

―…で?愛美、今何か俺に隠してることあるでしょ?

―…な、何で?

―確かに会うのは数週間ぶりだし。久しぶりの再会で多少は感動的にもなるだろうけど。それでもいつもの愛美なら、あんな風にいきなり抱きついたりしないんじゃないかなって。

―ごめん…やっぱり迷惑だったよね?私も無意識で…

―違う、そうじゃない。まあ、男としてはああいうのちょっと憧れるし?嬉しい限りでもあるけど…そうじゃなくて…俺なりの勘っていうか、気のせいかもしれないけど―あの時の愛美、若干だけど震えてたような気がしたからさ。

これだもんな…。
私は無意識だったけど、多分気のせいじゃないのは分かる。
元々物凄く頭が切れる上に、人の心が読めて、勘が鋭い彼。この気遣いや鋭さは、きっとシゲくんの生まれ持ってのもので、一流のホテルマンだから―という理由だけではないと思う。
困らせないようにしようと思っても、結局私はシゲくんに嘘がつけなくなるのだ。

―それ、今話さないとダメ?

―その答え方はやっぱり図星か。良いよ。夕飯食べながらでも、食べ終わった後でも。ちゃんと聞かせてくれるんなら。

―うん…分かった。

こうして、結局私は観念してしまった。

シゲくんが用意してくれた夕飯は、すき焼きだった。

―わあっ、美味しそう!しかも具がいっぱいで超豪勢だね!

―もうさ、3週間もあっちの訳わかんない料理食べてたら、ザ•和食!が妙に恋しくなって。帰国したら絶対すき焼きって決めててさ。せっかくだから愛美と一緒に食べたいなって。

―すき焼き美味しいもんねー、私も大好き!あ、だからシゲくんちょっと痩せたように見えたのかな。あっちの料理キツかったんだ?

―あぁ。確かに体重はちょっと減ってたよ。唯一美味しいと感じたのは、イギリスで食べたインドカレーかな?最近その手の店が増えてるみたいでさ。まあ、言って日本でも食べられるレベルだけど。総じて、料理は日本がいちばんだと思うよ。確かにホテルの格式とかサービスは、まだまだだなって思わされたこともいっぱいあるけどさ。

―そっかー。私は今のところ国内専門だから海外行くことってあんまりないけど、シゲくんの話は凄く参考になるなぁ。今後私がヨーロッパとか行くことになったら、また色々聞かせてね?

―うん。まあ、今回は特別長かったけど、これからも海外行く機会はそれなりにありそうだし。こんな話で良ければ、いつでも。で?愛美は俺に何を隠してたわけ?

―あーっ、その話かぁ…。

既に私たちはすき焼きを食べ終え、食後のお茶を飲んでいた(これもシゲくんが淹れてくれた)。

―会えない間寂しくて、やっぱりシゲくんが好きだなあって思った…って話じゃ…

―ダメだね。いくら可愛い事言ったって、俺がそんなんじゃごまかされないことくらいわかるでしょ?

やっぱりダメだよね。
まあ、それも嘘じゃないんだけどなぁ。

―えーっと。ここしばらく、会社から最寄駅まで、誰かにつけられてる気がしてて…

―何それ、完全にストーカーじゃん!危なすぎるでしょ…そんな大事なこと黙ってたの?

シゲくんの顔があっという間に険しくなる。

―で、今日、その正体が分かって…。

―誰?

―それが…元彼、だった…の。

―…!

何度も言うが、シゲくんは元彼の顔も声も、私を振った理由までをも知っている。

―家までは知られてないよな?

―うん、それは大丈夫。たまたまだけど、別れてすぐのタイミングで引っ越したから、向こうは何も知らないはず。

―そっか、それで?

―うん…今日後ろから肩掴まれて、声かけられて…俺とやり直して欲しいって。

―あーー、やっぱりそうきたか。

―やっぱり?

シゲくんの意外な反応に軽く驚く。

―どっかのタイミングできっとそんな話が来るだろうって予想は付いてたよ。それがまさか俺がどうにもできないタイミングでってのが、妙に腹立つけど。

―何で分かるの?

―そりゃ、同じ男として多少は。ほら、付き合う前だけど、前にも愛美に同じような話したでしょ?愛美をフッた理由も、同じ男として分かる気がするって。

確かにシゲくんはそんなことを言っていた。

―男の身勝手な屁理屈だって。んで、今回もまさにそれ。男の身勝手な屁理屈その2ってとこかな。

―そうなの?

―愛美はあの時、感情的に責めたり、泣いたりするでもなく、相手のことや仕事を尊重してあっさり別れたでしょ。男ってそういうのに弱いのよ。その時は別れてせいせいしているように見えたとしても、後から惜しいことをしたって気付いて、彼女との思い出とか、良かったところばっかり思い出して、しまいには何とか取り戻したくなるってわけ。で、愛美は言われてどうしたの?

―やり直すつもりはないってはっきり断ったよ。っていうか、今更何って感じしかしなくて。

―そっか。新しい彼氏いるのかって聞かれなかった?

―…! 聞かれた…。

―やっぱりか。男って基本バカだから。たとえどれだけ前に別れた彼女でも、こっちの気持ちが残ってるとさ。まだ自分のことが好きだろうとか、俺のモノだとか勘違いしてたりすんだよ。だからそれを確かめたくなったってところかな。それ、愛美はどう答えたの?

―答えたくなかったから、答えなかった。あなたに答える義務はない、って。

―うわっ、男にすればいちばんキツいパターンだよな、それ。

シゲくんが乾いた笑いを見せる。

―そうなの?

―好きの反対は「嫌い」じゃなくて、本当は「無関心」だって言うじゃん。まさにそういう答え方だよなぁって。

―だって、実際そうだもん。彼を見ても何とも思わなかったよ。それよりシゲくんに早く会いたい!としか…。それに、付けられた時点で怖くて…

そこまで言いかけたとき。
シゲくんに後ろからぎゅっと抱きしめられた。

―こんな時に限ってその場にいなかった俺がいちばん悪いけど。出張中も連絡するな、なんて言ってないでしょ。一言言ってくれたら、会社出てから最寄駅まで移動する間の10数分ぐらいなら、毎日電話できたのに。

―…ご、ごめん…。

―まあ、愛美が無事ならそれ以上のことはないから良いけどさ。実際、こっちにいる時と違って、四六時中オフィスで缶詰の時間なんてほぼなかったし。出張と言いつつ、観光旅行の延長みたいな感じだったかも。移動が多くて疲れたくらいでさ。って、そんなら俺の方から電話すれば良かったんだけど。

―そうだよ!それならシゲくんの方から電話くれたって…

―そうだよなぁ、ごめん。俺もつまんない意地張ってたかもしれない。何ていうかさ、今までの愛美のこと考えたら、俺がこっちいない間、多分物凄い仕事頑張ってるんじゃないかって思って。

確かにそれは当たっている。実際、この3週間はシゲくんがいないこともあって、連日仕事に精を出していたのは確かだ。それは、シゲくんが戻って来てからのタイミングで、少しでも有給を取りやすくしたいという気持ちもあったりして。

―それで、一生懸命頑張る愛美の邪魔したくなかったっていうかさ。方や出張と言いながら観光気分でリラックスした声なんか聞かせちゃったら、愛美をイラつかせるんじゃないかって。

―そんなことないのに!私は、シゲくんだったらどんな声でも聞きたいって思うし…

―本当、ごめん。じゃあ、お詫びついでに。

そう言うと、シゲくんはキッチン方面に消え、カチャカチャという音を数回立てたかと思うと、すぐこちらに戻ってきた。

―はい、これ。

―何?うわぁっ、美味しそう!

両手に白いお皿を持ったシゲくんの手元を見ると、美味しそうなケーキが載っていた。

―愛美は、多分こっちかなって。

そう言って、私の目の前に差し出されたのは、鮮やかな赤みがかかったピンク色の、フランボワーズのムースケーキだった。

―うん!ありがとう。

対してシゲくんは、シンプルなチョコレートケーキ。
普段甘いものをあまり食べないシゲくんだけど、チョコレートは好きらしい。

―今日は本当豪華だね?幸せだな〜。

―まあ、久しぶりのデートだし?俺だってこれくらいはするよ。ってか、これくらいで大げさ!

―あ、もしかしてまた照れちゃった?

―照れてねーから!

そう言いつつも、こちらを一切見ないでチョコレートケーキを一心に頬張るシゲくんは、確実に照れているのだろう。
そんなところも愛おしくて仕方ない。

私も、ケーキにフォークを入れ、一口食べてみた。
甘酸っぱい風味のムースと甘いスポンジが、見事にマッチしていて、とても美味しい。

―俺らさ、

不意にシゲくんが口を開く。

―結局この3週間、お互いしなくても良い我慢を必死にしてたってことになるよな?

―うん。そういうことになるよね。

―だから、これを機にもうそういうの、止めよ?会いたい時は会いたいし、連絡取りたい時は取りたい。それ以外も。無駄な我慢はしないで、ちゃんと伝える。これから約束な?

―う、うん。そうだね。分かった。

会いたいのも、連絡取りたいのも、寂しくなっちゃうのも、私だけじゃない。改めてそう分かっただけでも、嬉しかった。

―じゃあ、もう我慢しなくて良いんだよな?

―…?

その言葉の意味が分かりかねていると、隣でケーキを食べていたシゲくんが突然私の目の前に向き直る。

そして、そのまま不意打ちで唇を奪われてしまった。

―…ちょっと!これは聞いてないよ!

―可愛い彼女とふたりきりの状況で、我慢できるわけないでしょ。

2回、3回と繰り返されると、私の力もすっかり抜けていくのが分かる。
またしても、私は観念せざるを得なくなった。

久しぶりのキスは、甘くてほろ苦い、チョコレートケーキの味がした―――。

〜Fin.〜

【あとがき】
これも一応二次小説の扱いになるのでしょうね。
色々とグレーゾーンスレスレの感じが否めないので、数日公開の後、施錠しようと思います。

それにしても、書いててめちゃくちゃ楽しかったです!
書いてるうちに、彼目線ならぬ、シゲ目線ver.もやりたくなりました(笑)
ということで現在書いてありますが、こちらは、最初からパスワード限定公開にしようと思います。

最後までお読みくださった方いらしたら、感謝の極みでございます。

テーマ : NEWS
ジャンル : アイドル・芸能

最近の「スキ」について。

こんばんは、Mammieです。
こんな辺境ブログにも関わらず、度々多くの反響をいただき、大変嬉しく思っております。
いつも本当にありがとうございます!

さて、細々続けているこちら新蘭中心のブログですが、やはり創作にあたりましては、「新蘭以外に」(と言いますか、+αですね)好きなモノやヒトの影響というのは、避けては通れない要素ではないかと考える日々です。

事実、少し前に書かせていただきましたパラレル作品「レモンの味」シリーズにつきましても、
(俳優)溝端淳平くんが大好き!←工藤新一役の彼を見てハマるきっかけに→その後に出たドラマの役が報われなさすぎて辛い…→じゃあ、同じような設定の新蘭パロにしてしまおう!
と、こんな具合で構想が練られていきました。

じゃあ、最近の私は?と言いますと…心底スキな…否、スキになってしまったモノ(ヒト)が2つ、あるのです。
今回は箸休め的にそれらをちょこっと(で済むでしょうか…!?)紹介させていただきます。
何故ならば、こんなことは到底ここでしか書けないから、です(苦笑)

①サザンオールスターズ
わざわざ特筆するまでもなく、サザンオールスターズ(以下、サザン)は元々気になっていたし、好きなグループでありました。
事実、現在執筆中のシリーズ「Love Affair」シリーズ以前にも、サザンの楽曲からインスパイアされた作品が(構想中のものも含め)いくつかあるからです。
その風向きが大きく変わったのは、今年8月に発売されたベストアルバム「海のOh,Year!!!!」の存在を偶然知り、購入に踏み切ったから、でした。

どれだけヘビロテして聴いても全くと言って良いほど飽きが来ない上に、メロディだけうろ覚えしていて、気になっていた曲のうちのいくつかが、実はサザンの曲だったと判明するや、もうこれまで以上に虜になってしまい(笑)
この夏の酷暑は、サザンを聴きまくって乗り越えたといっても過言ではないくらいです。
そして、ステキな新曲3曲の中に、三ツ矢サイダーのCMで使われている(た?)
「壮年JUMP」という爽やかなナンバーがあるのですが…。

♪誰にだって 胸トキメキの アイドル、アイドル…♪

往年の大スターやアイドルたちへの思いや感謝が詰まっているキラキラした曲、とその時はただ思っていたのですが…

私にとって、そんな胸ときめく「アイドル」って誰かいたかな…?
これまで振り返っても、そこまでの人って、いないよね…?

この時はそう思ってたんです。
そう、この時この瞬間までは…。

②某男性アイドル
こんな日が来るとは思いませんでした。
これまで、全くと言って良いレベルで関心のなかった人にこんなにハマってしまうなんて…(苦笑)

きっかけは、実に私らしく、とある連続ドラマを軽い気持ちで見始めたこと。
本当にただそれだけのことでした。
原作が面白いからと主人に勧められて何の気なしに見ていただけだったのです。

しかも、そのドラマは恋愛要素は皆無。
出演者はほぼ男性ばかりで、レギュラー出演の女性はたったひとりという、今時のドラマにしては大変珍しい構成でもありました。

もうここまで語った時点で、何のドラマか分かった方も多いでしょう。
答えはズバリ、
「ゼロ―一獲千金ゲーム―」
でした(笑)

つまるところ、某男性アイドルというのは、このドラマの主演を務めていた、
NEWSの加藤シゲアキさん(以下、シゲさんとお呼びします←)のことです(笑)

実のところ、最初の方は彼に対してさほど関心がありませんでした。
ジャニーズであること、NEWSというグループに所属していること、時々ドラマやTVで見かけること、確か名前表記がカタカナであること、小説?を書いていること?
そして、まあそこそこのイケメンであること。
本当にこの程度の認識しかありませんでした。

24時間TVのヨシノリ先生の演技はとても良かったなと思っていたのですが、その後の嫌われる勇気(これは彼の責任ではなく、脚本やアドラー心理学の捉え方そのものに無理があったせいだと思っています)ではさほど印象に残らず、今回のゼロについても、特に初回は日常ではまずしないであろう内容のモノローグが非常に多かったせいか、棒読み感が抜けず、今思えば申し訳ないながら
「うーん、ちょっとなぁ」
とまで思ってしまっていたほどでした。

ところが、やはり物語を見ていくとそれなりに愛着が湧いてくるのか、彼の演技に自身が慣れていったのかはよく分かりませんが、元々十分に画面映えするルックスをお持ちという事もあり(このドラマは衣装もずっと同じで、彼のルックスの良さはあまり活かされていなかったのが今思えば残念にも思いましたが…)、気づけば次第にゼロが、シゲさんがとんでもなくカッコよく見え出し(というか元々そういうルックスの持ち主なのですから←)、いつしか完全に彼にハマってしまっていました(苦笑)

その後は、いつものように彼の歴代の出演作を漁り(何と淳平くんが出ていた失恋ショコラティエにも出演していたこと、後から気づく愚かさです←当時も、シゲさんのこと自体は認識していたものの、淳平くん見たさに、彼以外のシーンはほとんど飛ばしてしまっていた始末)始めたのですが、彼の作品はさほど多いわけではない上、自身が原作を手がけた映画のカメオ出演を除き、未だ映画への本格出演はないということもあって、見られる作品がそれほどない(デビュー当時やごく若い頃の作品が多い)ことに気づきます。
舞台の出演が結構多いんですよね。

が、彼は単なる俳優ではなく、「アイドル」だったということを思い出し、これまた軽い気持ちで彼が歌って踊る姿を見たら…
これが間違いの元でした(爆)
もう、完全に彼の魅力に取り憑かれてしまったと言っても過言ではないでしょう(苦笑)
俳優さんも素敵だけど、歌って踊ってキラキラしているアイドルってやっぱり良いな、と思った時、桑田さんの渾身の1曲であろう、「壮年JUMP」がより鮮やかな響きとなって私に届いたことはもはや言うまでもありません。

ジャニオタでも何でもなく、ただの気まぐれなにわかファン(担当という程のレベルでもないと思います)ですが、まさか、恋愛要素ゼロのドラマで、自身が主演俳優(アイドル)に惚れてしまうなどという展開は、最早予想だにしていませんでした(笑)
ちなみに、同じ作品から、間宮祥太朗氏も少し気になり始めております(笑)

短期間でシゲさんをこれほど好きになってしまったのには、単にルックスや出で立ちのみならず、それなりの理由もあるのです。
実は、私とシゲさん(などと言ってしまうのはおこがましいですが)には、なかなかの共通点があります。

◎誕生日が7/11(生まれた年は違いますが)であること
◎A型
◎左利き
◎文系で、文章を書く仕事に携わっている
◎パーソナルカラーがウインターであること

同じ誕生日の有名人はこれまで何人かいましたが、いちばん嬉しいのは、今となってはやっぱりシゲさんですね(笑)
好きな人と同じ誕生日ってものすごく嬉しい!
これは、未だに信じられなかったりします(笑)

私はもう文章を書く仕事からは退いており、彼のように小説家でもないですが、やはり人の書いた文章については今なお関心があります。
もちろん彼の小説も読んでいますが、私はシゲさんの文章はもちろん、世界観や思想も含めてとても好きです。
これに関しては、私は好みが激しく、人としてはどんなに好感度が高くても、合わない時は合わないし、ダメなものはダメなので、そこは良かったなぁと(苦笑)

パーソナルカラーまで同じ(ちなみに、男性のウインターは、イケメン率が高いと言われています)なのに、何故私には美貌も文才もないのか…と嘆きたくもなりますが、こればかりは仕方ありませんよね(苦笑)

とまあ、まだ全然書き足りませんが、今回はこの辺で…。

でも、こうして彼を好きになったことで、書く作品の幅は間違いなく広げられたなぁと思っています。
現在のLove Affairシリーズで、これまでより男性アイドルに関して詳しく?書けるようになったのも、シゲさんの影響は少なからずあるのかなと(笑)

彼に関してはまたちょこっと書かせていただくかもしれませんが、興味のない方は遠慮なく飛ばしてくださいませ!

※私は、知識も見聞もなく、いわゆるガチオタの領域には到底及びません。おそらくこれからもそのスタンスは変わらないと思います。その道の方からすればツッコミどころや納得いかない部分も多いかもしれませんが、どうかその辺りは静観もしくはスルーしてくださればと思います※

Love Affair〜秘密のデート〜 side.S

―っんだよ、これ!ふざけんな!

江戸川シンイチ―彼のプロフィールはまた後ほど詳しく説明するとしよう―は、とある雑誌のページを見た途端、怒りを爆発させた。

―一体何回目だと思ってんだ!?いい加減目ぇ付けられてることに気付けよ、それから関わる相手も慎重に選べって!あれほど何度も言ってんのに、まだ分かんねえのか、お前らは!

怒りの矛先は、彼の仕事仲間らしい、これまた若い男たち複数名。
史上最強のイケメンと名高いシンイチには及ばないものの、そこそこ顔が整ってはいる。

しかし、メンバー達の反応はどうにも手応えがない。

―はいはい、どうもすみませんでした〜
―俺らだってストレス溜まるんすよ、ずっと窮屈な生活で。
―マネージャーじゃないんですから、そんなにやかましく言わないでくれます?少なくとも仕事はそこそこやってるつもりなんで。

シンイチが言い返そうとする前に、気怠げな表情を隠さぬまま、男たちは部屋から出て行ってしまった。

男たちの代わりに入ってきたひとりの女性。
美しいブロンドをショートカットにし、太枠のメガネが理知的な印象をさらに強めている。

―ジョディ、俺マズイこと言いました?何か間違ってます?

―シンイチの言うこと、いつも正しいですネー!スバラシイ!but!あの子たちまだまだコドモだから、分からないのかもネー。

―っていうか、普通に日本語喋れるの、俺知ってるんですから、カタコトのフリはいい加減よしてくださいよ、社長!

―もう!私のことは社長呼ばないで、っていつも言ってるでしょ、シンイチ!
How many times do I have to tell you the same thing to you!(何度同じことを言わせたら気が済むのよ!)

―わかりました、すみません。ジョディ。

ジョディ•スターリング。
彼女の業界で、否、今や日本中で彼女の存在を全くもって知らない者など、皆無に等しいであろう。
それもそのはず、彼女は現在、日本国内最大手と言っても過言ではない芸能事務所、「ジョディーズ事務所」の社長を務めている。
このジョディーズ事務所は、いわゆるイケメンアイドルを多数抱え、次々と世に放っては大ブレイクさせているのだ。
彼女は、その2代目社長である。
元々、彼女の父親が設立した事務所なのだが、彼の待望の娘、すなわちジョディーが誕生したことから、世の少女たちを虜にし、夢を与えられるようにと、彼女の名前をもとに、「ジョディーズ」と名付けられた。
偶然か否か、そのジョディ本人が、父親の勇退を機に(1年前に他界した)数年前、本格的に事務所事業を引き継ぐこととなったのだが、世界を股にかけてこれまで芸能以外の様々な経験を積んできた彼女はことさら優秀かつ有能だったことに加え、更に女性目線でのアイドル選定や育成、デビュー戦略が奏功しているのか、デビューさせたグループは軒並み大ブレイク、父親以上のやり手、文字通りの ハイパーウーマンだと、業界内外で大評判だ。

初代社長が事務所を設立してから早数十年。
現在、日本国内でジョディーズの名や所属タレントを全く知らないという者は最早ほぼいなくなり、特に若い女性を中心に、皆ジョディーズのイケメン達の虜になっていった。
事実、ジョディーズ事務所のアイドル達をTVで全く見ない日などない、と言っても過言ではないほどだ。

そして、現在このジョディーズ事務所の絶対的エースと言われているのが、彼、江戸川シンイチ、20歳。
人気も実力もルックスまでも、若手ではぶっちぎりのNo.1と言われており、他事務所の追随ですら許さないほどだ。

ちなみに、この江戸川シンイチという名前は、彼の本名ではない。
ジョディーズ所属のアイドルたちは原則本名を使うことが多いのだが、彼は強い希望を社長に訴え、芸名の使用が認められる事となった。

彼の本名は、工藤新一であるが、これは、社長のジョディと事務所幹部数名しか知らないトップシークレットになっている。
それはすなわち、彼の父親が高名な推理作家の工藤優作氏、そして、母親がこれまた超有名なハリウッド女優、ユキコ•クドウ氏(工藤有希子、旧姓「藤峰」)であるという事実も完全に伏せられていることを暗に示している。

当初、シンイチはこのジョディーズ事務所に身を置くこと、すなわち、歌って踊ってライブツアーをもこなすアイドルになることなど、希望もしていなければ、一切想定もしていなかった。
むしろ、自分では最もあり得ない、積極的には進みたくない道でもあった。

それが、様々な理由と縁が交錯した結果、このようになったに過ぎない。
シンイチは、元々俳優志望であり、いつかは米国や英国などの海外を中心に、世界を股にかけるトップアクターになることが夢であり目標だった。
しかしそこには、あまりにも有名かつ偉大な母親の存在がある。
母親と同じところや同じ分野でデビューをするのは比較的簡単な事ではあったが、すぐに親の七光り(シンイチの場合は十四光になるかもしれない)だ何だと言われ、正当な評価がなされないであろうこと(彼は色眼鏡や2世故の僻目よりも、必要以上に擦り寄って来たり、甘い評価をされることの方を恐れていた)や、世間の興味がおかしな方向へ行ってしまうであろうことは火を見るよりも明らかだった。
2世タレントや俳優と呼ばれる人たちの世間の評価や仕事ぶりを見ても、目に見えて分かることだ。

母親と同じ俳優の仕事に自然と興味を持ち、TVに出てみたい、演技をしてみたい、芸能事務所に所属したいと思い立ったのが、15歳の時。
当時、シンイチは両親とともに、米国で暮らしていたのだが、この時には既に、学業も優秀だったシンイチは、現地の名門高校に合格し、飛び級で卒業が可能な段階にまで至っていた。

そこで、母親に相談してみたところ、
―じゃあ、身分を隠してまずは日本でデビューすれば?と言っても、何かの拍子にバレちゃったりした時、そういうのを利用する悪徳事務所だと話にならないし…そうだ!じゃあ、私の知り合いが社長やってる日本の事務所に応募してみたら?彼女なら有能だし、後から事情を話しても問題ないから…。うん、じゃあ早速書類送っちゃうわね♡

こうして、半ば勝手に母親に書類を送られた先が―
ジョディーズだったというわけだ。

結果は、何と書類のみで合格。
応募からわずか1ヶ月後、高校卒業が決まった、絶好のタイミングでのことだった。
しかし、当時ジョディーズの事を全く知らなかったシンイチは、アイドル養成の事務所だったということを、合格してから初めて知る事となり、大いに憤慨した。

―おい、母さん!所属先がアイドル養成の事務所だなんて聞いてねえぞ!俺が歌ったり踊ったり投げキッスなんてできるわけねーだろ!特に…俺の歌については知ってんだろ!?

―そう、だからよー♡でもまさか、本当に合格しちゃうなんて思いもしなかったわ、さすがは新ちゃん!それに社長さん、とっても素晴らしくて魅力的な人だから、大丈夫よ♪早速よろしくお願いしますって、ご挨拶の連絡をしておいたから、無下にしないでよね!早速荷物まとめて、来週には日本に行かないと!
―か、母さん!
―それに。真面目な話、芸能界ってやりたいことばかりが思い通りにできる世界じゃないから。やりたいことやれるようになるまでに、何倍も、何十倍も、やりたくないことをやって、地道に積み重ねて行かなきゃなんないのよ。
―………
―事務所の社長、ジョディも言ってたけど…単なる親の欲目じゃなく、多分新ちゃん、最初から俳優一本でやったとしても、センスは抜群だし、私のDNAも良い具合に受け継いでいるから、普通の人ほど苦労せず、その気になればすぐ上の方に行けると思う。これは、何人も俳優や女優の卵を見てきた私が言ってるんだから、きっと間違いはないと思うんだけど…だからこそ、最初は全く違う分野でゼロ、いやマイナスかしら?から頑張ってみるのも良いのかなー、なんてね。
―母さん…
―って!新ちゃんがアイドルになったら、ポスターやブロマイド、うちわなんかも買い放題だから、もー今から楽しみねー!
というわけで、頑張っちゃって♡せっかくのチャンスには違いないもの、日本で思いっきり大暴れしてきなさい!
―おいっ、母さん…せっかく途中まではそこそこ良い話だと思ったのによ…
―ジョディーズでも、アイドルから俳優もやってそこそこ活躍している人もたくさんいるし、まあ、チャンスがあればそういう話も回ってくるんじゃない?ま、とりあえず頑張って♡

母親の策略により、とんでもないことになってしまったが、社長と母親が旧知の仲とあっては、確かに無下にはできない。
とりあえず、今後のことは社長と話だけでもしてから決めようと、しぶしぶだが、久しぶりに単身で日本へ行くこととなった。
後から知ったのだが、このジョディーズ事務所というのは、自薦で応募する人ももちろんいるが、家族や親戚が本人の了承もそこそこに、勝手に書類を送ってしまい、いざ受かってから寝耳に水というパターンも決して少なくないらしい。
確かに、アイドル養成の事務所だと前もって知っていたら、俺は否応なく猛反対、抵抗したであろう。

しかし、日本でジョディ―事務所社長―に会って。
俺の人生は大きく変わった。
結論から言えば、この社長になら付いて行きたい、付いて行こうと思えたのだ。
自分のことを一切社長とは呼ばせず(呼べば怒られる)ジョディと呼び捨てろという(ジョディさん、でもダメなのだ)、日本語もちゃんと話せるのにわざとカタコトで話している疑惑があったり、変人にも見えるが、話をするうち、彼女が、ジョディがどれほどのやり手なのか、所属するアイドルたちを大切に育てようとしているのかはよく分かった。
この辺の勘というのは、昔から自信があるつもりだ。

―YOU、シンイチの写真見た時、これだわー!と私も思って久々にエキサイトしちゃった!こういう正統派クールガイを最近見てこなかったから、日本中大歓迎よ!あなた絶対売れるわ!私に任せて!明日からダンスレッスン来てね♡

それからわずか3ヶ月後のこと。
俺と同時期に事務所に入って来た他4人のメンバーを加えて、驚くほどのスピードでグループデビューは決まった。
やはり、事務所始まって以来の早さらしい。

グループ名は、
「PRIVATE i s’」(プライベート アイズ)
俺が推理小説好きで、ごく幼い頃は探偵になるのが夢だった、というエピソードからジョディが閃いたらしい。

ちなみに、日本でも十分に有名な両親の存在、否気配ですらも隠しておきたかったため、工藤の姓を使わずに済むようジョディに頼み込み、デビュー前から、姓を除いた「Shinichi」名義で通してもらっていた。
しかし、いざデビューするとなれば、通称としてフルネームにした方が良いだろうということで考えた結果、「(私立)探偵」を意味するグループ名にもちなみ、有名な推理作家で、俺も気に入っている「江戸川乱歩」の姓を拝借することに。
更に、ローマ字のShinichi表記は意外と文字数が嵩むが、江戸川 新一という表記ではあまりにもアイドルらしからぬ字面かつ古風に見えてしまうとのことで、最終的にファーストネームをカタカナに替え、
「江戸川 シンイチ」
と名乗ることに決まった。

アイドルの自分はあくまで仮初めの姿。
いつか、実力を付けて俳優として食べていけるようになった時には堂々と本名「工藤 新一」を名乗って活動する。
これが当面の大きな目標だ。

この新しいグループは、これまでのジョディーズにはなかった、インテリイメージを全面に打ち出して行きたいとのことで、他メンバー4人は、(まあ、俺も向こうの高校を既に卒業しているが)名門中学受験経験者や合格者を中心に集められたということだ。

かくして、めまぐるしいスピードでデビューが決まり、俺たちは世に放たれることとなった。
そして、ジョディの戦略、先見の明は恐ろしいくらいにヒットし、グループは一気に大勢のファンが付き、文字通りのスターダムを駆け上がっていくこととなる。
TV、ラジオ各番組や雑誌にライブはもちろんのこと、ジョディの打ち出したインテリイメージというのも間違いはなかったようで、クイズ番組のレギュラーも入って来たりした。

それから5年。
俺は20歳になった。

グループとしての活動は今なお、まあそこそこには安定しているとは思うのだが…
個人的には、この5年でピークは過ぎ去り、少々翳りが見え始めてきたように感じている。

ジョディーズは年々、息の長い活動をするグループが増えており、グループとしてはまだまだできたばかりの若造だが、とにもかくにも今年はデビュー5周年となるメモリアルイヤーであり、ひとつの節目を迎える段階に来ていた。

この5年、俺はやれること、やるべきことを精いっぱいやって来たと思っている。
ジョディーズに所属し、異例の早さでデビューさせてもらった恩は常に感じていたこともあるし、最初は望んでいなかったものの、やるからにはプロのアイドルに徹しよう、と思った。
それに、グループは、この世界において言わば自分の家のようなもの。
大切にしなければならない、いや、絶対リーダーの自分が守り抜くんだと誓ってもいた。

自分のやりたいことより何より、ひたすら今の自分がやれること、やるべきことを最優先にしてきたつもりだ。

ダンスレッスンは真面目にこなし、家でも自主練は欠かさない。
ジョディに頼んでボイストレーニングの講師を見つけてもらい、特訓した(もちろん今も続けている)おかげで、当初より、歌も随分自信が持てるようになったし、ソロアルバムまで出すことが決まった。
ファンに対しては極力えこひいきをせず、皆を楽しませ、喜ばせるよう努める。(最初はひたすら気恥ずかしかったお手振りや投げキッス、ウインクも今ではお手の物だ)
プライベートは必要以上に明かさない。
そして、無用なスキャンダルは絶対に起こさない。
故に、ファンとの個人的な関わりは一切持たない。
飲み会や交流会、打ち上げへの参加も、失礼には当たらない程度の最小限に抑える。
知り合いがやっている店以外は原則立ち寄らないし、利用もしない。
空いた時間は優先してジムへ行く。
演技の勉強も欠かさない。

これらのことを徹底してこなしてきた。

おかげでこの5年、アイドルとしてだけでなく、モデルや俳優の仕事も着々と入ってくるようになった。

しかし、俳優業に関しては、やはりジョディーズの名前というのは強く、未だアイドルありきの役柄が非常に多いのが現状だ。
まだ自身の年齢が若いこともあり、その辺りの需要が大きいのだろうとは理解している。

確かに、専業の俳優ではない上に、1年のうちの数ヶ月は、ライブツアーもこなさなければならない身だ。
極端な減量や増量が求められる役や、見た目を大きく変えざるを得ないような役は積極的には受けられないということもある。
現時点で、自らのスケジュールはグループやソロの仕事でいっぱいで、スケジュールの確保が非常に難しいのが現状だ。
撮影期間がしっかりと決められているテレビドラマならば前もっての依頼で多少は詰め込みも利くのだが、特に拘束期間が読めない映画や舞台の仕事は、やりたくても断らざるを得ないことも多いのが残念なところだ。

そして、自分で言うべきことではないのかもしれないが、自分とその他メンバーの温度差も気になってきていた。
しかも、その温度差はそのまま、周囲からの評価やファンの人気度にも完全に比例してしまっているように思う。

実はこのところ、PRIVATE i s’(以下、アイズ)の他メンバーによる異性絡みの嘆かわしいスキャンダル報道が後を絶たない。
真剣な熱愛報道ならばまだしも、既に、何度か際どいベッド写真諸々まで流出してしまっている有様だ。
週刊誌やその為媒体には、今のアイズは【スキャンダルの宝石箱】とまで揶揄されている挙句、各社にすっかり目を付けられてしまい、「(リーダー以外の)アイズのプライベートはガタガタでユルユル」だという不名誉な烙印まで押されかかってしまっている。
まだ、リーダーである自分が徹底して無傷を貫いているために、持っているところがあるのは、想像に難くない。
しかし、それは逆に言えば、各社は喉から手が出る程【俺のスキャンダル】が欲しいということに外ならないだろう。
マスコミのマークが厳しくなっていることも自覚している。

ジョディは異性関連のスキャンダルには比較的寛容で、流したりせき止めたりするのも抜群にうまいのだが…
しかし、メンバーの中には未成年も含まれており、もしも飲酒喫煙騒動でも起こされたら、さすがのジョディも黙ってはいないだろう。
しかも各媒体は、アイズのメンバーに関するさらに大きなスクープを掴んでいるという噂も根強く、この先、グループの存続自体を揺るがす大問題に発展してしまうのではないかという恐れもはらんでいる。

冒頭で俺がメンバーにブチ切れたのは、ソロアルバムのジャケット、MV撮影やレコーディング諸々のため、レギュラー仕事の傍ら、述べ数週間にわたって国内外を飛び回っていた隙に、またしてもスキャンダル写真(今回は向こうに音声データまで撮られてしまったようだ)が週刊誌に載ったから、だった。

俺がこれだけ頑張ってるのに…と主張したくはなったが、奴らも奴らで、個人的な人気が思うように得られないという現状に不満を抱えており、面白くないのだろう。
俺はとてつもない例外だと自負しているが、ジョディーズ事務所に入って来るものの中には、
「異性にモテること」
「キャーキャー言われること」
を主目的にしている場合も実際少なくはないと思う。
ただでさえハードな仕事なのは間違いない。
そうなれば、キャーキャー騒がれるような現場に出るのが一種のストレス解消手段という見方もあるのかもしれない。

「アイズは最早江戸川シンイチの1人舞台」
「エドシン(俺のあだ名だ)とその他メンバーの格差がありすぎる」
「ライブに行っても、会場にあるのはほとんどシンイチのうちわばっかり」

特にこの1、2年は、普段あまり業界人以外の声は必要以上に耳に入れないよう努めている俺ですら、このような醜聞は残念ながらどこにでも耳にするようになってしまってきている。
すなわち同業者や業界人にまで、そう思われ、言われてしまっているということだ。

おそらくアイズは、ジョディーズ発の他人気グループのように、この先何年もずっとやっていけるグループではないだろう。
おそらくは、元々ジョディが「俺自身」を売り出すために作ってくれたグループと言っても過言ではないかもしれないのだ。

今後のことに関しては、今までジョディには何度も相談してきているし、彼女は「どうするかはシンイチが好きなタイミングで全部決めれば良い」と言ってくれているのだが…

アイドル活動を続けていくべきなのか、そろそろ見切りを付けて、やりたいことに向かうべきなのか。

ただ、アイドル活動そのものがもう嫌になった、というわけでは決してなかった。
それに関しては、入所してすぐに見方が変わり、自分なりにやりがいや使命を感じているつもりだ。
それに、もちろん自分たちをここまで連れて来てくれたファンに対して感謝の思いもある。
故に、自分がひとり簡単に見切りを付けて、アイズを放り出すようなことはどうしたってできない。

一体俺は何をどうしたら良いのか。
悩みに悩んだ末、俺はジョディにしばらくの休暇―10日間―を願い出た。

一度、アメリカの実家に戻って骨休めし、何もかもをリセットしてやろう、そんな風に思ったのだ。

ところが、奇しくも、休暇を許された時期が、ゴールデンウィークともろに被ってしまった。
案の定、アメリカ行きの飛行機はどこもかしこも満席。
ビジネスクラスですら満席で、キャンセル待ちだと言われてしまったのだが…。
何と、渡航3日前に一席だけキャンセルが出たという。
申し訳ないと思いつつも、その人に心からの感謝をしながら、両親に連絡を入れ、アメリカ行きの準備を始めた。

そして、その飛行機の中で。
俺は運命の出会いを果たすこととなる―。

―あ、あの、すみません…。私、7-Aでして…

声の主を振り返ってみて驚いた。
流れるような黒髪、つぶらな瞳…可愛い声…
職業柄、綺麗な女性はそこそこ見慣れているつもり(実際はそうでもない場合も結構あったりするし…)でいたけど、正直彼女はそれに引けを取らない…いや、それ以上か…もしかして同業者?しかし、さすがにこのレベルの子であればもっと話題になっていてもおかしくない…それに…

とりあえず、席を移動して彼女を通した。
広い席に座っている彼女は、いささか緊張しているように感じる。
それに、ビジネスクラスはそもそも優先搭乗ができるはず。
にも関わらず、エコノミークラスと同じ搭乗時間帯に乗ってきた彼女。
それに、彼女は心なしかあたふたし始めた。リクライニングのスイッチを探しているのか、謎のスイッチに手間取っているのか…。

放っておけなくなった俺は、おせっかいとは思いつつも、つい、彼女に声を掛けてしまった。

―いきなりで不躾かもしれませんが…もしかして、ビジネスクラス乗るの初めてだったりします?
―あっ、はい…実はそうなんです。

やはり最初の印象通りとても感じが良い。
これも職業柄故なのか、気も我も強い女性と接することが多くてやや辟易しているため、心の底から癒される。

この会話をきっかけに、彼女と色々な話をすることができた。

単純に、彼女のことをもっと知りたいと思ったし、やはり少なからず可愛いなぁと思ってしまったのもある。
今考えても、随分調子に乗った発言をしてしまった。

―もしかして、カレシとのお忍び旅行が突然ポシャったり…とか…しました?

―今日俺はあなたとこうして知り合えた。空の旅は長いからさ、せっかくだから仲良くしましょう。

歯が浮くような台詞とはまさにこのこと。
恋愛ドラマは既にそこそこやっているけど、こんな台詞など滅多にないのに。

しかし、彼女の反応はいちいち予想通りで、からかったりちょっと押したりするのが止められなくなってしまった。
それに―彼女はどうやら俺のことを全く知らないようなのだ。
俺の方を見ても、悲鳴も上げなければ、顔色ひとつ変えない。
あまりTVは見ないのだろうか。
それはそれで好都合かもしれない。

さすがに、俺はアメリカに行けばそこまで注目されずに済む(母親と歩けば別だが)。
「旅の恥はかき捨て」なんて言うけど、思えばこの時から、俺にとって彼女は少なからず気になる存在―有り体に言えば一目惚れってやつか―になっていたのだと思う。
今までおおよそ感じたことのない感情に囚われるのを感じていた。

離陸後も彼女と少しずつ話をした。
彼女の名前は、毛利蘭と言い、現役の東都大生と知り、軽く驚く。
父親が警察官、母親が弁護士をしていて、将来は母親と同じ弁護士を目指していることも聞いた。

警戒心があまりないのだろうか、それとも、彼女も慣れない旅でテンションが高いのかは分からないが、会ったばかりの俺に色々と話をしてくれる。

俺、自分の事はほとんど話してないのに。
俺が話したのは、彼女と同い年の20歳で、もう仕事を始めている、ということだけ。
簡単には話せないと言う事情ももちろんあるのだが…
俺が日本ではそこそこ知名度のあるアイドルだということは、彼女には何となく知られたくなかった。
この時は未だ、その理由までは分からなかったが…

結局、連れの友人がキャンセルしたことで、現地へ行ってもほぼノープランだという彼女の話を聞き、偶然にも滞在先と俺の実家が近所だったこともあり、ダメ元で一緒に観光しないかと提案してみたら、最終的にOKとなった。
彼女の不安を取り除くために、母親の同行を提案したのも奏功したかもしれない。

この時はまだ、色々な意味でひとり旅は心細いであろう彼女の助けになれたら、という思いしかなかった。
はずだった。

そう、「あのとき」までは―

観光初日の午後、母さんの仕事先でトラブルが発生し、急遽NYへ飛んでいくことになってから、以後数日間、成り行きだが蘭とほぼふたりきりで過ごすことになった。

彼女はどう感じたのかは分からないが、少なくとも、俺に関してはプライベートで(ここが重要だ)、女性とふたりで出かけた事はほぼ初めてになる。

はっきり言って、めちゃくちゃ楽しかった。
楽し過ぎた。

このまま彼女と何の気兼ねもなくお付き合いできたら、どんなに幸せだろう。
そんなことまで思ってしまった。

そして、最後の夜。
【恐れていたこと】が起きた。否、自ら起こしてしまった。
サンタモニカは既に家族や現地の友人と何度も行ったことはあったけど、この日はやはり格別で。
真紅のワンピースに身を包んだ蘭は本当に綺麗だし、可愛かった。

蘭とは未だ会って数日。
特別な仲ではない。
あくまで旅で知り合っただけ。
何より自分の立場を忘れちゃいけない。
俺は今はまだ、「アイドル」を全うしなきゃいけないだろ?

この数日間、何度も何度も、自分に言い聞かせてきたつもりだった。

しかし。
最終的には、できなかった。

―蘭。嫌だったら俺を思いっきりぶっ飛ばしてくれ…。

(一応この時点で蘭が空手の有段者であることは知っていた)

こう言うのが、俺の精いっぱいだった。

でも、蘭はその場を動かない。

それで、つい…。

抱きしめて、キスまでしてしまった。

その後、蘭から連絡先を教えてもらい、休暇を終え、俺もその数日後に帰国した。
「また必ず連絡する」と約束して。

でも、結局のところ、俺は最後まで自分の正体を明かすことはしなかったし、できなかった。
世の中、知らない方が、いや、知ってもらわない方が幸せなこともあると思う。
というのは、俺の勝手な言い訳だとわかっているのに…。

休んでいたこともあり、数ヶ月先まで既に仕事が埋まっていて、とてもこれ以上の余暇を作れそうにはない。
どんなに頑張っても、早朝か深夜に数時間を捻出するのが限界だ。
蘭にはもちろん、あれから何度も連絡は取ったけど、「忙しい」ことを強調してしまった手前、蘭の方から連絡が来ることはほとんどなかった。

早朝か深夜にしか会えないと言われれば、無理だと言われることはおろか、色々な意味で怪しまれるリスクもあるのは重々承知だ。

本音を言えば、自分の境遇を知ってもらった上で、蘭にきちんと思いを伝えて、きちんと付き合いたい、と思っている。
もうこの時点で、蘭以外の女性は考えられなかった。

でも、今はまだできない。
誰も許してはくれないだろう。
わがままなのは分かっている。
でも、蘭が自ら俺のことを知るまでは。
普通(ただ)の男でいたかったから―。

だが、今から2週間ほど前のこと。

【シンイチくん、連日お仕事お疲れさまです。遅くにごめんなさい。
理由は分からないけど、寂しくなってしまって、ふっと連絡したくなっちゃった。
迷惑だったら、ごめんね。】

時刻は真夜中になろうとしていた頃だっただろうか。
ちょうど、仕事を終え、マネージャーに家まで送ってもらっている時だった。

蘭からの思いがけない連絡で心が跳ね上がり、そして、そのまま無性に会いたくなった。

―申し訳ないけど、今から例の車、手配してもらえませんか?一旦帰ったら、件のバーで1杯だけノンアルカクテルを飲みたくて。
―それは構わないけど、運転は?
―今回は俺がします。
―そう。あの場所はマスコミも全く知らないだろうし大丈夫だろうけど、深夜の運転、くれぐれも気を付けてよ。
―了解です。

蘭からOKをもらい、帰宅後、すぐに手配された車で蘭を迎えに行った。
年季の入ったボロボロの軽自動車。
もちろん、マスコミ対策だ。
デートには不向きだけど、マスコミの目は何としても避けなければならない。
よもや、人気アイドル(自分で言うのは何だが)がこんなボロボロの軽自動車を運転しているとは誰も思うまい。

蘭をすぐに迎えに行き、俺たちは数ヶ月ぶりの再会を果たした。
―蘭、久しぶり。こんな時間にごめんな。元気だった?
―うん、元気だったけど…

なかなか思うように会話が続かない。

カクテルを1杯だけ飲み(蘭にはアルコール入りを勧めた)、車窓からの夜景を楽しんで帰って来るだけの、あまりにも短い時間。
蘭は、未だ俺の正体には気付いていないようだ。

何か言わなければ。
そう思っていたが、またしても時間切れになってしまった。
車を降りるため、シートベルトを外した蘭。
潤んだ目で瞬間、こちらを見た。

俺はまた、勝てなかった…。

順番がおかしいのは俺も重々分かっている。
きっと、蘭がそれで不安になっているのではないかとも。
でも、自分の正体を未だ知られていないのをいい事に、また俺は、ちょっと仕事が忙しい「普通(ただ)のオトコ」のフリをしてしまった。

だが、今回も時間切れだ。
蘭は、相変わらず礼儀正しく、ありがとうと言い、車を降りて行った。

遠ざかる後ろ姿を見つめながら思った。
初めて姿を見て、声を聞いたあの時から。
俺は、やっぱり蘭のことが好きなんだ。
この気持ちは、簡単には手放せない…。

以前、雑誌の取材でこんな質問をされたことがあった。
Q.もしも本気で好きなヒトができちゃったら、その時どうする?
A.本気で好きになっちゃったら、その時はもうどうしようもないかな(笑)でも、当分はちゃんと仕事に集中したい!

なんて答えていたのが懐かしく感じてしまう。
それから、俺は色々と考え抜いた末、ある結論に辿り着いた。
ジョディにはいちばんに話し、了承を得た後、両親にも話した。

そして、覚悟を決め、蘭に連絡を取る。
明日の夜、会えないか、と―。

返信は、想定していないものだった。
でも、いつかはこんな日が来ると思っていた。
ついに、彼女が俺の正体を知ったのだ。
今朝の番組を見て。

だから、もう会わない方が良い、という彼女に、俺は食い下がった。

【来るつもりないっつっても、来るまでずっと待ってるから。】

蘭には今まで本当に申し訳ないことをした。
でも、蘭のおかげで、俺は大きな決断ができた。
あと少し、待ってて、蘭…。

明日、全てを告げるから。

―To be continued...


テーマ : 名探偵コナン
ジャンル : アニメ・コミック

Love Affair〜秘密のデート〜 side R.

―えっ…何、これ…。
―嘘…でしょう?

いつもの朝。
何の変哲も無い1日の幕開け。

そのはずだった。

普段はあまり見ないはずなのだけど、何の気なしに点けただけのTV。
そこに映っていたものが目に入った時…。

全身の力が一気に抜け、血の気がどんどん引いていくのが分かった―


【彼女の名前は毛利蘭。
国内最高学府と名高い、東都大学の法学部2年生で、将来は弁護士を目指している。
先日、20歳の誕生日を迎えたばかりだ。

大変な努力家で知られる彼女は、猛勉強の末、第一志望だった東都大学に見事現役合格を果たした。更に空手道の有段者でもあり、その腰には黒帯が締められている。
その上、誰もが振り返るほどの美貌の持ち主でもあるときた。
実のところ本人にその自覚は全くないのだが、幻のミス東都大(彼女がミスコン出場を固辞したため)という声も名高く、まさしく東都大のアイドル的存在でもある。

容姿端麗、頭脳明晰、文武両道の品行方正、つまるところは才色兼備…まさに(文字通り)向かう所敵なし(で最強)の彼女なのだが、それにもかかわらず、恋人の存在や浮いた噂は一向に上がって来ない。
多くの男性から次々好意を寄せられているにも関わらず、彼女自身が鈍感で、なおかつ恋愛にそれほど興味もなく、恋愛経験も皆無なのが主たる原因のようなのだが…

さて、彼女がこの日見たものとは、いったい何だったのだろうか…?
話は、しばらく前に遡る。】

あれは、今から3ヶ月くらい前のこと。
大学2年生のゴールデンウィークは、親友の園子とアメリカ旅行へ行く予定になっていたんだけど…。

―ええーっ?虫垂炎(盲腸)で、手術した?!
―そうなのよ…本当にごめん、こんな肝心な時に…。

今回のアメリカ女子旅を熱望していた園子は、病院でも随分粘ったようなのだけど、結局医師からの渡航許可は下りず、ドクターストップがかかってしまったらしい。
さすがに術後間もない状態で、海外旅行は無謀に等しい。

―でも、もう3日前だし、今旅行を取り止めすると、飛行機とかも全部キャンセル料かかるよね?
―私の分はもう仕方がないからってパパが了承してくれたんだけど…蘭が今キャンセルすると、良くて半額しか戻って来ないみたいで…本当ごめん…。一応、あっちに常駐してるホテルスタッフは、蘭ひとりでも手厚くフォローするから安心していらっしゃいとは言ってるんだけど…どうする?

財閥のお嬢様である園子の力で(冷静に考えると本当凄いなぁと思う)、財閥お抱えの高級ホテルに格安で泊まれる上、人生初のビジネスクラスにまで乗れるという、私みたいなしがない大学生には分不相応の超絶リッチな旅が予定されていたのだけど…まさか、園子が直前に手術だなんて…完全なる想定外とは、まさにこのことだ。

でも、せっかくこの日のためにアルバイトして貯めたお金や捻出した時間がもったいないと感じてしまった私は、園子の強い勧めもあって、結局今回はひとりでアメリカに旅立つ事に決めたのだった。

ビジネスクラスの搭乗など、生まれて初めてだった私は、何もかもが戸惑いの連続。専用待合室だというラウンジなる施設があることも、この時まで全然知らなかった。(早速ケーキをいただいてしまった…)
いつもとは全く違う待遇や手順に圧倒されながらも、何とか搭乗することができたのだけど…。

チケットを改めて確認してみると、私の席は7-Aで、窓際だ。
本来園子と並び席のはずだったから、通路側の7-Cはきっと空席なんだろうな…

と思っていたら。

驚いた事に、通路側には既に先客がいた。
どうやら、若い男の人のよう。
サングラスをかけていて、ちょっと話しかけづらいけど、ここは仕方がない…。

―あ、あの、すみません…私、7-Aでして…
―おっと、これは失礼。はい、どうぞ。
―あ、ありがとうございます。

思っていたほど感じの悪い人じゃなくて安堵する。
いつもとは全く違う広い座席。
えっと、リクライニングはどうするんだろう?このボタンはいったい?!

早速戸惑ってあたふたしている私を見かねたのか、隣の男の人が助け舟を出してくれた。

―いきなりで不躾かもしれませんが…もしかして、ビジネスクラス乗るの初めてだったりします?
―あ、はい…実はそうなんです…
―やっぱり。でも、気にすることじゃないですよ、誰にだって初めてはありますし。あはは、余程のセレブでもない限り、そんなにしょっちゅう利用するもんじゃないですよね。リクライニングはここ。このスイッチは読書灯です。
―あ、ありがとうございます…私、何も分からなくて…助かります。ビジネスクラス、慣れてらっしゃるんですね?
―まあ…そういうことにしておきますかね。

素顔はサングラスでほとんど分からないけど、端整な顔立ちをしているんだろうなとは、簡単に想像が付く。
声を聞く限り、とても落ち着いているようだし、私より年上なのかなぁ。ビジネスクラスに何度も乗っているみたいだし、バリバリお仕事をしている人に違いない。

―あのさ。
―…何ですか?
―もしかして、カレシとのお忍び旅行が突然ポシャったり…とか…しました?
―えっ!?ま、まさか…!ち、違います!私、彼氏なんかまともにいたことないですし!

いきなりなんてことを言うのだろう、この人…って、私、最後余計なことまで言っちゃったような!?

―ハハッ、そうか…それは大変失礼。でも、ひとり旅じゃなくて本当は誰か連れがいたんですね?
―ど、どうして分かるんですか?
―俺、アメリカ行きを決めたのがちょうど3日前のことで。当然ながらこんな時期、エコノミークラスはとうに満席。で、ダメ元でビジネスも調べてもらったら、ちょうど1席キャンセルが出たって話でさ。つまりこの席だけ奇跡的に空いてたってわけ。
―そうだったんですか…おっしゃる通り、本当なら、幼なじみの親友と一緒に乗る予定でした。でも、彼女直前に急病になってしまって、キャンセルするしかなくて…。
―やはりそうでしたか。彼女には申し訳ないけど、そのおかげで、今日俺はあなたとこうして知り合えた。空の旅は長いからさ、せっかくだから仲良くしましょう。あっ、こんな話し方はガラじゃないんで、敬語は一切使わなくて良いから。どうぞよろしく。
握手を求められ、反射的に握ってしまったが、嫌な感じはしなかった。

この人、何でこんなにキザな台詞をさらりと言えてしまうんだろう。
こうして、飛行機は無事に離陸し、何もかもが予定外と想定外な旅が幕を開けることになった。

離陸後も、彼は相変わらず饒舌だった。
せっかくだからとお互い簡単に自己紹介しあったところ、彼―「シンイチ」さんは、意外にも私と同い年だということが判明。でも、学生ではなく、どうやら既にバリバリ仕事をしているらしい。凄いなぁ。
あまり立ち入ったことを聞くのもはばかられたので、私からはそれ以上、仕事の内容を詳しくは聞かなかった。
彼曰く、とにかく不規則で休みが取りづらい仕事らしく、いつも直前にしか予定が立たないのだとか。

連日のハードワークで息が詰まりそうだったため、気分転換のつもりでアメリカ行きを決めたらしい。
何でも、彼のご両親が仕事の関係で、LAに長年住んでいるのだそうだ。

―ま、親がいて家まであるLAなら、ホテル代も特別要らないしな。

と、笑いながら言うシンイチさん。

そして、偶然にも彼のご両親が住む家―つまりは、彼の滞在先だ―と、私が滞在する予定のホテルはものすごく近所だということが分かった。

―向こう着いてもひとりきりで基本フリーなんだろ?俺で良ければLA色々案内するぜ?不安だったら、母さんにも同行してもらうし。

―ええっ、いくらなんでもそんなの迷惑じゃありませんか?まだ知り合ったばかりだし…

―全然。だってこういうの、運命の出会いって奴かもしんねーだろ?!

もう、さっきから、何でこの人こんな台詞がさらりと言えてしまうんだろう。
きっと今まで何人もの女の子に同じようなことを言ってきてるんだ。
見る限り、女の子にとってもモテそうだし、彼女だっているに違いない。
それなのに、何でこんなに地味な私にまで…。

とは確かに思うのだけど、実際LAに知り合いはひとりもいないし、彼の提案がありがたいのもまた事実だった。
それに、何となくだけど、彼が女たらし(かもしれないんだけど…)の悪い人にはどうしても思えない。
お母さんに会わせてくれるとまで言っているし…
でも、それも嘘で仕込みだったら?

普段の私なら、もっと丁重にお断りしていたと思う。
大学の男子からも声をかけられたり、誘われることがそれなりにあるけれど、いつも断るのが大変で、断りきれずに出かけてしまったこともあった。
それは良いのだけれど、その大半がどうしても楽しいとは思えないもので…(理由は色々ある)。
園子や友人に相談してみたら、
「そういうのは、最初のうちにしっかり断ってしまわないと、ダメよ!」
と言われ、それからは多少きっぱり断れるようになった。
はずだったんだけど。

きっとこういうのを、世間では「トラベルハイ」とでも言うのだろうか(実際こんな言葉があるのかどうかは分からないけれど)。
もしくは、この旅自体、最初から「想定外」の連続なのだから、もうどうにでもなってしまえと、半ばヤケになってしまったのかもしれない。
そんなこともあって、結局私は、彼の提案に最後まで「No」とは言うことはなくて…。

―あっらぁ!あなたが噂の蘭ちゃん?なんって可愛らしい子なの!?えっ、しかも現役の東都大生ですって!?まあ、素晴らしいわ!良かったわねぇ、シンちゃん!ヤケクソでこっちへ来ようとしたところに、運良くチケットを手配できただけじゃなく、こーんなに可愛くてしかも賢い子とバッチリ知り合えちゃうなんて、強運にも程があるわね!私はユキコ•クドウです!シンイチをどうぞよろしくね♡

驚いたことに、シンイチさんは本当に、LA到着後すぐ、私にお母さまを紹介してくれた。これまで会ったことがないレベルの、物凄い美人だ。
お母さまは、シンイチさんを迎えに来ていたようだったけど、何とついでに私をホテルまで送ってくれるという。

本来ならば、ホテルの人が私を空港まで迎えに来てくれることになっていたのだけど、お母さまはホテルの人と知り合いらしく(何の仕事をしているんだろう?)、電話1本でいとも簡単に話がまとまってしまった。

お母さまの話で初めて、私は彼の苗字が「クドウ」だということを知った。

そして、車の中で徐にサングラスを外したシンイチさん。
ううっ…想像してた以上の超イケメン。
これはもう、女の子にモテモテ…どころのレベルじゃないだろうな…。

それにより、お母さまとシンイチさんはそっくりで、仕込みではなく実の親子であろうことも確信が持てた。

―蘭ちゃん…はシンイチと今回が初対面?―は、はい…飛行機の中で会ったのが初めてで…。
―シンイチの顔…どこかで見覚えがあったりしない?
―うーん…ない、と思います、すみません…
―おい、母さん!当たり前だろう!
―ふーん、そっかぁ、シンイチもまだまだってことね。
―余計なお世話だ!
―そ、そんなこと…こんなにカッコイイ人、一度会ったら絶対忘れないと思いますし…

―まあっ、カッコイイですって!良かったわね、シンちゃん♡蘭ちゃん、今からすぐにホテルに行って休みたい?それとも、もしもまだ元気があったら、少し家に寄っていかない?会ったばかりで何だけど、せっかくの出会いだもの、疲れていなかったら、皆で少しお茶でもどうかしらって思って…

こうしてユキコさんの計らいもあり、私はここからあれよあれよという間に、クドウ親子のペースに飲み込まれてゆくことになってしまった。

この日は結局、クドウ家で夕飯までご馳走になってしまい(これがとても美味しかった)、ホテルに着いたのは、すっかり辺りが暗くなった頃だった。
しかも、翌日は早速、ハリウッド観光に連れて行ってくれるという。

―シンちゃんったら、こっちへ戻って来るのは良いんだけど、毎日家でゴロゴロしてばかりなんだもの、退屈もいいところよ。久しぶりに、外へ出る口実ができて、私も嬉しいわ!じゃあ、明日は3人で出かけましょうね!朝、またここまで迎えに来るわ♡

こうして、ユキコさんと別れた後、早速ホテルにチェックインをする。
空港で預けた荷物は、既に部屋に届けられていた。

部屋も素晴らしいことこの上なかったのだが、ルームサービスの無料チケットと、エステ&スパの特別利用券が数枚置かれていることに驚く。
慌てて担当のスタッフに確認してみると、今回、園子が旅行を急にキャンセルせざるをえなかったということで、鈴木家から心ばかりのお詫びの印ということらしく、遠慮しないで使って欲しいという伝言まで付いてきた。

園子にも連絡をしようと思ったが、時差の都合もあるだろうし、何より、園子からの連絡はあれから一切来ていない。
術後間もない状態であるし、それどころではないのだろう。
一応、いつも使っているメッセージアプリに、無事に着いたことと、チケットのお礼の旨を送信した。

翌日。
随分と豪華な朝食を済ませると、レストランのスタッフから、先程ユキコさんたちの車がホテルに到着したことを教えられる。
慌てて準備を済ませて向かうと、そこには本当に銀色のお洒落なスポーツカーが停まっていた。
―おはよう、蘭ちゃん!さぁ、乗って乗って!
―よっ、蘭。
後部座席から、シンイチくん(呼び捨てで良いと何度も言われたけど、さすがにそれはできなくてこうなった)も顔を出して右手を上げる。

そこからは、もう何が何だか…。
気持ちとしてはジェットコースターに乗っているみたいなのだけど、3人でのハリウッド観光は何の違和感もなく進んでいった。
昨日会ったばかりとは思えないほど、会話も弾んだし、何よりとても楽しかったのだ。

有名なハリウッド俳優の名前が書かれたロードとか、ユニバーサル•スタジオ•ハリウッド(USH)の映画ロケ地見学とか、途中立ち寄ったお店自慢の生搾りオレンジジュースを飲んだりとか…。

しかしそのうち、ユキコさんに電話がかかり、何でも急な仕事が入ってしまったとかで、NYに突如飛ばなければならなくなった。
聞けば、ユキコさんは色々な仕事をしているようだけど、今はファッションブランド立ち上げやコスメプロデュースに力を入れているらしい。親子揃って凄いんだなぁ。

―こんな時にごめんねぇ、蘭ちゃん。本当ならずっと一緒に回りたかったのに…

こうして、あまりにも自然な流れで、残りの日数はシンイチくんとふたりきりでLA観光や散策をすることになったのだ。
次の日も、その次の日も、ユキコさんに代わって、シンイチくんがわざわざホテルまで送り迎えをしてくれた。
控えめに言ってもとても楽しかったし、文句も言わずに当たり前のように最後まで付き合ってくれたシンイチくんにはとても感謝している。

全ての旅程を終えた帰り際、彼に連絡先を教えて欲しいと言われ、特に深く考えず、園子や大学の友達といつも使っているメッセージアプリのIDを教えた。

「帰国したら連絡する」

正直旅が終わったら、それで終わりだとしてもやむを得ないと思っていたし、全然期待はしていなかったのだけど、実際、シンイチくんから何度か連絡はあって、また会いたいと言ってはくれていた。
ただ、仕事が本当に忙しいようで、当分休めないから、どんなに頑張っても夜中や早朝にしか会えないという。
もう一度会いたいかと聞かれれば、会っても良いな、会いたいなとは思うけれど…

園子にも、他の友達にも、シンイチくんと出会った詳しい話は一切していない。園子には、旅先で出会った親切な日本人と一緒に観光をして、とても楽しかった、という話をするまでに留めておいた。

これだけ「忙しい」「会えない」となれば、結局その気がないからとの結論でも仕方がないなと思う。
旅先で出会って、少しだけ一緒に行動しただけに過ぎないのだから。

加えて、それとなく、詳しいことは避けながら(他の友達の相談事を装って)この状況を園子に話してみたことがある。

―それは、アレね。身体目的ってやつか(実際その段階には達してないけれど)、もしくは、既婚者。夜中か早朝しか会えないだなんて、どう考えても怪し過ぎるわよ!

園子の答えはもっともだと思った。
一応お母さまにもお会いしているから既婚者とは思えないけれど、少なくとも本命の彼女は別にいるに違いない。
だから、これ以上彼のことは考えないようにすると決めた。
あくまでも私の中だけでステキなキラキラした旅の思い出にしよう。

そう、思っていたのに…。


こうして、話は冒頭へと戻る。

この日、蘭がTVで見たのは。
満面の笑みで映る、彼―シンイチくん―その人だったのだ。

画面の中の彼は、
黒いインナーに高級そうな赤いジャケットを羽織り、頭にサングラスをセットして、濃紺のデニムで決めている。
身に着ける人によっては「古い」「イタい」「ダサい」となるかもしれない、こんなに大胆なファッションをこれでもかとカッコよく決められるのは見事と言うほかなかった。

―ジョディーズ事務所が誇る絶対的エースであり、PRIVATE i s’(プライベート アイズ)のリーダーを務める、歌手でモデル、俳優の江戸川シンイチさん(20)が、このほどソロ曲の最新アルバム、【NEW-ONE】をリリースしました…
―江戸川さん、今回のアルバムについて一言お願いします。
―今の自分にできる最大限かつ、集大成的な位置付けと思っていただければ良いかなと。老若男女問わず、ひとりでも多くの方の手に渡ればうれしく思います…

その後はもう、何の声も画面も目に入って来なかった。

どうして今まで何の疑問も持たなかったのだろう。
気付かなかったのだろう。
苗字は違うようだけど、名前は同じ「シンイチ」。見間違うはずがない。
これまで見たことがないくらいのとびきりなイケメン。お母さまも超美人。
それに、思えば、江戸川シンイチという名前、園子や大学の友達が連呼していたような気がしなくもない。

理由は分からないけれど、唐突に溢れてくる涙。
そして、3ヶ月前のとあるシーンが強烈にフラッシュバックしてくる。

LAで過ごした最後の夜。
私はシンイチくんに誘われて、サンタモニカに出向いた。
遊園地やショッピングモールが充実しており、カップルがデートをするにはぴったりの場所。
夜景もとても美しかった。

何を思ったか、私達はそこで、

最後にハグされ、キスをした。

私にとっては紛れもない、ファーストキスだった。

ファーストキスについては、色々な憧れは持っていたけれど、シチュエーションはこれ以上ないくらいに素晴らしく、完璧だったと思う。
ただ、【大好きな彼氏と】という前提は完璧に崩れ去ってしまった。

今思っても目眩が起きそうなほどに甘酸っぱい風味を存分に帯びた記憶として焼き付いているし、どんな形であれ、少なくともその時は「シアワセ」な気分を味わうことができた。

でも、彼の方はどうだったのだろうか…。

彼のことは忘れようと一旦は決めていたはずだったけれど、実は、帰国後一度だけ、彼に会ってしまった。

2週間ほど前のこと。
理由もなくどうしても寂しくなってしまって、彼に会いたくなってしまったタイミングと、彼からのメッセージのタイミングが見事に一致してしまったのだ。

その日の真夜中、彼はお世辞にも綺麗とは言い難い、随分年季の入った軽自動車でやってきた。
―せっかく会えたのに、こんなんで、ごめんな。
と言っていたけど、イメージと違って意外だなと思った。

この日も彼は早朝から仕事があるらしく、あまり時間はないけどと、行きつけらしい超高級バーでカクテルを1杯ごちそうになり(当たり前のように彼が支払ってくれたけど、いったいいくらしたのだろう)、その後は、車窓から大白埠頭の夜景を楽しんだりして、帰ってきた。

移動時間も含めて、正味1時間半ほどのとても短いデートだったけど、私の心は面白いほどに満たされた。

そして、帰り際。
彼は車内で当たり前のように私にハグをして、2回目のキスをした。
―また連絡するよ。
の言葉と甘い余韻だけを残して。

―私たちって、今いったいどんな関係なの?!
―付き合ってるの?!

もし、次に会えたら彼に聞こうと思っていた。けれど、結局それはできなかった。

そんな風に逡巡してしまったり、思い悩んでいる時点で、私は彼を、シンイチくんを、心の底から好きになってしまったということ、認めるしかない。

まさか、自分がこんな事を相手に聞いて確かめなければならないようなシチュエーションに放り込まれる日が来るなんて、思ってもみなかったことだ。

好きだとも、付き合って欲しいとも言われていない。
キスはした(私にとってはファーストキスなんだけど…)けど、それ以上の関係を持っているわけではない(もしかしたらこのままだと時間の問題なのかもしれない)。

いつのまにか、私は降り方の分からない空中ブランコに担ぎ上げられてしまったような気分でいた。
彼のことが好きだから。
もし次があるなら、次こそは何とかしないと…と思っていた矢先、こうして彼の正体を知った。知ってしまった。

彼がどうして、自分からは仕事の話を詳しくしたがらなかったのか。
ビジネスクラスに簡単に乗れるのか。
早朝や深夜しか会えないと言っていたのか。
イメージに見合わない車に乗っていたのか。
そして、
どうして私との関係をハッキリさせようとしなかったのか―。

全ての謎が、面白いくらいに解けた。
全てが当然であり、必然だったのだ。

彼は、人気絶頂で絶賛売り出し中のアイドル。
多忙で当たり前だし、恋愛自体に制限がかかっていたとしても、何ら不思議ではない。

彼に憧れ、恋をしているであろう女性達は、きっとこの世にごまんといるのだ。
何も知らなかったとは言え、そんな彼に半ば本気で恋してしまうなんて…。

以前、軽い気持ちで不倫に手を出してしまい、抜け出せなくなってしまった大学の友達に対して、
―やっぱり、ヒトのモノに手を出しちゃうのは、良いことじゃないと思うな。
と苦言を呈したことがあった。
(ちなみに、その子は未だ完全に不倫を止められていないみたい)

でも、じゃあ、私はどうなるの…!?

不倫は「ヒトのモノ(人はモノではないとわかっているけど、ここはあくまで例え話で…)に手を出す」行為とされているけど、私は「ミンナのモノ」を欲しがろうとしているってこと…?

正直、不倫より罪が重いのではないかと思う。

やっぱり彼のことは忘れなきゃ。
あくまで、彼の仕事を心の中で応援する立場に回った方が良い。
彼のことを思い出さないようにしないと。
このまま忘れた方が良いに決まっている。

そう思い、メッセージの通知は切ることにした。
…のだけど。

―♪♪♪☆

このタイミングで彼からのメッセージ―。

呆れるほどに彼のタイミングはいつでも絶妙だった。
たったこれだけで、私の心がまた大きく揺さぶられてしまう。
恋心というのは厄介だ。私にはとても飼いならせそうにない。

【明日の夜、少し時間が取れそうなんだ。会えないかな?】

これで最後にしよう。
私はそう決意して、彼にこうメッセージを送った。

【今日の朝、TV観ました。今まで本当に何も知らなくてごめんなさい。シンイチくんのことはこれからもずっと応援しています。でも、知ってしまった以上、もう会わない方が良いんじゃないかと思う。シンイチくんがどんな理由で、私に会おうとしているのかは分からないけど…。】

最後の一文は余計だったかもしれない。
でも、もう取り消せなかった。
驚くことに、すぐに既読が付き、返信が届いた。
彼にしてはかなりの長文だと思う。

【そっか。今日の番組観たのか。だったら話は早い。今までのこと、これからのこと。蘭にだけは全部話すよ。ってかちゃんと話したい。これまで黙ってたことも、全部。明日の夜迎えに行くから。来るつもりないっつっても、来るまでずっと待ってるから。】

そしてすぐに2通目が来た。

【だから頼む。ネットとかマスコミの情報は一切鵜呑みにしないでくれ。そこに真実はどこにもねーから。】

彼はこれから何を話してくれるのだろう。
私に話したいことって何なのだろう。
考える前に、私の指は勝手に動いてしまった。

【分かりました。明日の夜、空けておきます】

彼の言う真実の先に、いったい何が見えるというのだろうか。

―To be continued...

テーマ : 名探偵コナン
ジャンル : アニメ・コミック

新シリーズ、始動!?

閲覧ありがとうございます!

先日、ようやっとレモンの味本編を完結させることができました。

さて、タイトルでございますが。
ここに来て「またかよ!?」と思われることは百も承知で(苦笑)

新シリーズというのは大げさで、短編集のようなものを書けたらと思い立った次第です。

と言いますのも。
今年デビュー40周年を迎え、最近やたらめったら熱いサザン!
昔から好きなバンドではあったのですが、新曲やいくつかの楽曲目当てに、発売された最新アルバムを買って聴いたら、これがもう素晴らしい!ということで、ますますハマってしまったのであります。

こんなサザンの話が新蘭創作と何の関係があるのか、という疑問はごもっともかもしれませんが(笑)

その、サザンの楽曲にちなんだ新蘭ストーリーを書かせていただこうかなと思い至ったわけでございます。

実は、昨年のVD企画にて、すでに一度サザンの曲を使わせていただいております。
(その時は「涙のキッス」でした)

どこまでインスピレーションが続くかは分かりませんが、以降はカテゴリ
「Shin×Ran―feat.Southern―」
にて細々公開しようかなと思います。

さて、涙のキッスに続く2作目の楽曲は…?!

ズバリ、
Love Affair〜秘密のデート〜

を予定しております!

えっ?!
ラブアフェアって明るくて爽やかだけど不倫の歌でしょ!?
大丈夫??

というお声が出るかもしれませんが、ガチの不倫話というわけではないので、そこは安心してお読みいただけるかなと思います。

それでは、公開まで、今しばらくお待ちくださいませ。
このお話は1話完結ですが、現時点では合計3編を予定しています。
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Mammie

Author:Mammie
Mammie(マミー)と申します。
最近は、新蘭二次小説執筆がメインで、現在は、パラレルストーリーを連載中。
気軽に話しかけて下さったら嬉しいです。
ブロとも・相互リンクも募集しています。

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